8. ページ8
.
そして、休日になっても彼は、
平日と変わらず、ずっと家事をしている。
「はーい、どいてくださーい！ 掃除機通りますよー！」
「いいよ、今日くらい。 のんもゆっくりしなよ？」
ゴロゴロしながらそう声をかけても、
あかん、って首を振って。
「1週間お仕事頑張ったAちゃんが、
部屋汚いやとゆっくり快適に過ごされへんやろ？」
いや、あなたが来る前はずっと、
週一の掃除で暮らしてたのよ？
そう言いたいけど、気遣って掃除をしてくれるのなら、
お願いしちゃおうかなっていう甘えがでて、
結局は、そのまままたゴロゴロしてしまう。
「けほっけほっ、けほけほっ、」
「のん、大丈夫ー？」
「…んっ、だいじょーぶっ、」
それよりむしろ、
彼自身が汚い部屋を嫌っているのだと思う。
だから、初めて入った時は、
その汚さにびっくりしただろうな。
今は見違えるほどの綺麗さにも関わらず、
彼はそれでも特別敏感なのか、
よく咳をする姿を見るけど。
「ねぇ、明日、どこか行く？」
だから、思わずご主人様である私から、
どこかに遊びに行くことを提案してしまった。
「どっかって…？」
「どこかはまだ決めてないけど、
ほら、高校生っぽいとこ行こうよ？」
私とが嫌なら息抜きに行ってきたら？って。
まあ、毎日どこかしら散歩に行ってるなら、
そういった場所にも遊びに行ってるかもしれないけど。
そしたら、なぜか少し困ったような顔をした彼。
「どこでも…いい？」
掃除機を止めれば、眉を垂れさせて尋ねてくる。
いや、アメリカ！、とか言われたら困るよ？
「1日で帰ってこれる距離ね？」
「ん！ わかってる！ わかってる！」
そして、また掃除機を再開。
よかった、なんか嬉しそう。
「じゃあ、海！ 海行こ！ 一緒に！」
「えぇ？ 今、冬だよ？」
「関係ない！ ってかもう春やから！
タクシーで行こ！ 俺が出したるから！ な！」
そしたら、なんかかなり贅沢な旅になりそうな予感。
ここからならお台場が1番近いかなぁ。
電車の方が安く済むけど、
彼がタクシーで行きたいって行ってるし、
日頃のありがとうで、お金も出してあげていいかもね。
一瞬困った顔のことは忘れてた。
なんであんな顔したんだろうなんて、微塵も。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 520人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恋夏 - のんは子犬に生まれ変わったんですね。涙が本当に止まりません。素敵な小説でした。ありがとうございます (2018年8月2日 18時) (
レス) id: bda6d95fa7 (このIDを非表示/違反報告)
りぽるん(プロフ) - 茉都香さんの小説を読んでると一気読みしてしまうほどお話に入り込んでしまいます。笑、はっきりしたものが読みたいです。最後どうなったのか詳しく知りたくて…(^^)のんちゃんsideありがとうございます！ (2018年1月15日 22時) (レス) id: fa9357a811 (このIDを非表示/違反報告)
しげまる。(プロフ) - 子犬に繋がるのならばどちらでもいいなって思います。更新楽しみにしています (2018年1月15日 18時) (レス) id: b8c40dadba (このIDを非表示/違反報告)
有香(プロフ) - ハッキリとした結末が良いです (2018年1月15日 16時) (レス) id: 68ee6ce1a6 (このIDを非表示/違反報告)
玲夢@低浮上(プロフ) - コメント失礼します！めっちゃ面白くて毎日更新が楽しみでした(*^^*)私はハッキリとした結末が読みたいです！これからもこっそり読ませていただきます(*´ｰ｀) (2018年1月15日 16時) (レス) id: a6dfca7116 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：茉都香 | 作成日時：2017年6月21日 13時
