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Dreißig. ページ29

どうしようもなく君だけだった。
君しかいらなかった。
君だけが、私の全てだった。






____「好き、って……言って」

____「っ……なん、で」

____「お願い……っ……言って」





あんなに望んでいた事なのに、何故こんなに虚しさを感じているのか。
何故こんなに、痛くて苦しいのか。
何故こんなにも、罪悪感だけが募るのか。

蓋をした真実の心を、握り潰してしまおうとした。
何処かに葬り去ってしまおうと思った。
だけど、気付かざるを得なかった。
そんなふうに考えている時点で、答えは明白だった。






「ねぇA……私は、何一つ、君に与えたことが無かったんだね」





ただ埋まらない隙間を埋める口実が欲しかった。
生きていいよ、と許可が欲しかった。
あんなにも鮮明な記憶は、もう自身が潤色したものかもしれないなんて。

だって私は彼女に求めるばかりで、
自分から何かを与えようとした事など無かったのだ。

彼女の白い肌に光る、銀の月が私を醒ました。
この目に映る、あんなにも焦がれた少女は何処かへ消えてしまったのだ。

あの日、彼女に触れたその時から。
私は、愛情なんて初めから存在していない事を知ってしまった。





____君が欲しかった。
____“Aじゃなくても良かった”


____ずっと焦がれていた。
____“空いた穴を埋める言葉に”


____愛しくて堪らなかった。
____“私を肯定する笑顔が”


____愛してた。
____“満たされている自分を”






残酷な真実だ。
けれど、私は納得したんだ。
安心したんだ。
触れる度に、名を呼ぶ度に、
擦り切れていく彼女を傷つける理由は、もう無くなるのだから。

傷んで、砕かれて、傷だらけになっても
それでも輝き続ける美しき純潔を
保ち続ける唯一の存在。

何処かで悟っていたのかもしれない。
それはきっと、自分ではないのだと。






「私は、生きていいという許可が欲しかった」

「君達は、その体質を消せる相手が欲しかった」

「お互いが、お互いを利用してただけだ。
其処に、愛なんて生まれるわけなかったのにね」

「私はそれを愛と誤解した」

「__でももう、終わりにしよう」

「真っ直ぐな君のまま、
染まらないまま、
その真愛を貫いてね、A」








私は、それでもこれを恋と呼ぼう。
これを愛と定義しよう。

色付いた景色が、
網膜に焼き付くように。
呼吸するように。

ただ、君の幸せを願い続けるから。

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設定タグ:中原中也 , 立原道造 , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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チョコ - 私中也が推しなんですけど、中也落ちでとてもおもしろかったです!文章の書き方凄くお上手ですね…素敵な作品有難う御座いました! (11月2日 20時) (レス) @page36 id: 521e64f565 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 立原が好きで一気に読ませてもらいました!! 落ちは素敵帽子君でしたけど素敵なお話でとても満足です 素敵なお話有難うございました!、 (2019年8月15日 16時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - とても面白かったです!!!続きが気になり一気に読んでしまいました笑 素敵な作品を作ってくださりありがとうございました♪ (2017年10月5日 9時) (レス) id: b2880a4db3 (このIDを非表示/違反報告)
桜紅葉 - 立原落ちの小説なくって...立原落ちの小説じゃなかったけどとても面白かったでした!!道造の小説増えて欲しい... (2016年12月14日 20時) (レス) id: c36e1fb932 (このIDを非表示/違反報告)
命乱(プロフ) - 所で…立原落ちの長編小説をリクエストって出来ないですよn((貴方様が書いてくれたら、もっとファンが増えるかと思ったんです…(・ω・`) (2016年11月24日 1時) (レス) id: 7f8e3351f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2016年8月5日 22時

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