Achtundzwanzig. ページ27
「お迎えに上がりました。
さっさとその忌わしき狗は切り捨ててくださいよ、ね?」
酔いを誘う香り。
不自然に笑う男は、私の手を取った。
赤く汚れた、私の手を拭い、包み込む。
悪寒がした。
隣で横たわった彼に一瞥もせず、ただ私に笑いかけるその目に。
その目の、緋さに。
「何を……したの……!!」
「え?貴女に纏わり付く下賎な狗を撃っただけですよ。うちの
「貴方達は何者なの……?私に、どうして欲しいのよ……!!」
「…あぁ、名乗りもせずに無礼でしたね。僕はジョン・スタインベック。僕達は『
ジョン、という青年はカラカラと乾いた笑い方をした。歳はきっと近い。
だけど、違う。
笑ってなんかない。
彼の瞳の奥にあるのは、私に対する憤怒や憎悪。
咄嗟に銃を拾って構えた。
もう____青年は笑ってなどいなかった。
「____それは?」
「貴方に着いていくつもりはないわ。用があるなら直接来なさいと伝えて」
「強情だなぁ……これは僕に与えられた命令なんだ。遂行できなければ、僕は家族共々貧民街の住民になる。貴女と違って僕には富も権力も最高に価値のある物は持ってないからね」
「……どういう意味よ」
アスファルトの割れる音がした。
彼の腕から伸びた弦のような枝は、私を絡めて逃がさない。
青年の目が言っていた。
此れは明らかな嫌悪である、と。
尖った枝の先が、頬を裂いた。
また、青年はカラカラと乾いた笑い方をする。
「貴女はいいね。何でも持ってるじゃないか。残酷なまでに純粋無垢。腹が立つほどに鋭利な正義。
初対面の人間に言うのはどうかと思うけど、僕は貴女のような人間が一番嫌いなんだ。
____隣で浅く息をする彼も、貴女に支配されて人生狂わされてしまったというのに。
貴女の知らない人間が貴女の感情、私情次第で人生を奪われるなんて馬鹿な話だとは思わないかい?
それでも貴女は抵抗を選ぶ?」
ヒュッ、と喉から空気だけが出た。
睨みつける彼もまた、願ってもない犠牲を出して、その心を痛めているというのだ。
初めて会った人間の、今日を、明日を、私は狂わせる。
____この力はそういうものだ。
望まずに得た異能力を操作する事に、本人の同意など何の価値もないのだから。
「____なら君は、その嫉妬さえも彼女の力だと言うのかい?」
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チョコ - 私中也が推しなんですけど、中也落ちでとてもおもしろかったです!文章の書き方凄くお上手ですね…素敵な作品有難う御座いました! (11月2日 20時) (レス) @page36 id: 521e64f565 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 立原が好きで一気に読ませてもらいました!! 落ちは素敵帽子君でしたけど素敵なお話でとても満足です 素敵なお話有難うございました!、 (2019年8月15日 16時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - とても面白かったです!!!続きが気になり一気に読んでしまいました笑 素敵な作品を作ってくださりありがとうございました♪ (2017年10月5日 9時) (レス) id: b2880a4db3 (このIDを非表示/違反報告)
桜紅葉 - 立原落ちの小説なくって...立原落ちの小説じゃなかったけどとても面白かったでした!!道造の小説増えて欲しい... (2016年12月14日 20時) (レス) id: c36e1fb932 (このIDを非表示/違反報告)
命乱(プロフ) - 所で…立原落ちの長編小説をリクエストって出来ないですよn((貴方様が書いてくれたら、もっとファンが増えるかと思ったんです…(・ω・`) (2016年11月24日 1時) (レス) id: 7f8e3351f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2016年8月5日 22時