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Vier. ページ3

最後の温もりだ。
最後の香りだ。
最後の高鳴りだ。
全身が、彼女を愛していた。



「私は、貴方が、好きよ。
貴方の好きとは、違うかもしれない。
まだ、私には分からないから。

だけど、好きなの。
貴方がいると、とても安心するから」



十分だ。
彼女が、この腕に縋ってくれるのだ。
彼女が、自分を好きだと言うのだ。
形も重さも違う、それでも確かに愛なのだ。

それだけで、ただこの無機質な心が満たされる。
この渇きを癒してくれる。
人の愛し方を知った。
誰かを守る難しさを知った。
自分がこんなに、誰かを愛せる事を知った。

彼女の存在は、
彼女がくれたものは、
この世の何よりも変え難いものだった。



「その言葉だけで、俺は、十分だ。
俺さ、アンタの事すげェめんどくせェと思ってた。
でも俺は、アンタに出逢えた事が、今まで生きてきて何よりも嬉しいんだ。

もう、俺とアンタの間には何も無い。
俺は強くなる。中也さんよりも、他の誰よりも。
そしていつか、アンタを攫いに行って言わせてやる。

俺に、惚れたって言わせてやる」



まだまだ未熟で半端な俺は、彼女を守るには弱過ぎる。
焦がれた気高さを、純潔を、守り通せる強さが欲しいと思った。
そうすれば何時か、彼女は。


《 僕らのおもひは ささやきかはすであらう 》


俺だけのために生きてくれるだろうか。




「生意気ね、貴方は」

「もう上下関係は無ェからな。そうだろ?__A」

「!なんだ、その方が貴方らしいわ。無礼者」



《 ほほゑみが かはらぬ愛を誓つてゐた 》



「無防備にしてんじゃねェぞ。俺が行くまでは」

「はっ……偉くなったものね?誰に向かって言ってるわけ?
Fat chance!(ありえない!)
Sleep talking is speaking from sleeping.(寝言は寝てから言ってよね。)

「は?何て言ったんだ?」



彼女は悪戯に笑う。
楽しそうに笑う。
俺の一番、好きな顔で笑う。



《 私は待ちうけてゐた 一心に
私は 心もはりさけるほど待ちうけてゐた
私の日々を優しくするひとを 》



そして小さく一つ、頬にキスをする。




「貴方の知能がホモ・サピエンスを超えてから出直しなさい」

「待てアンタは俺を類人猿以下だと思ってんのか」




愛しい人よ。
貴女が笑うなら俺はそれで全てを許せるのです。
貴女が陽だまりのような優しさで、俺を包むものだから。




「また会いましょう?
____道造さん」





深く、愛しています。
貴女を。
ずっと。

Funf.→←Drei.



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設定タグ:中原中也 , 立原道造 , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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チョコ - 私中也が推しなんですけど、中也落ちでとてもおもしろかったです!文章の書き方凄くお上手ですね…素敵な作品有難う御座いました! (11月2日 20時) (レス) @page36 id: 521e64f565 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 立原が好きで一気に読ませてもらいました!! 落ちは素敵帽子君でしたけど素敵なお話でとても満足です 素敵なお話有難うございました!、 (2019年8月15日 16時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - とても面白かったです!!!続きが気になり一気に読んでしまいました笑 素敵な作品を作ってくださりありがとうございました♪ (2017年10月5日 9時) (レス) id: b2880a4db3 (このIDを非表示/違反報告)
桜紅葉 - 立原落ちの小説なくって...立原落ちの小説じゃなかったけどとても面白かったでした!!道造の小説増えて欲しい... (2016年12月14日 20時) (レス) id: c36e1fb932 (このIDを非表示/違反報告)
命乱(プロフ) - 所で…立原落ちの長編小説をリクエストって出来ないですよn((貴方様が書いてくれたら、もっとファンが増えるかと思ったんです…(・ω・`) (2016年11月24日 1時) (レス) id: 7f8e3351f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2016年8月5日 22時

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