【名探偵コナン】最強というモノ程、理不尽なことは無いと思う。 (ページ36)

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「お姉さんもここに住んでたの？」

心配してくれているのか、歩美ちゃんが遠慮気味に尋ねてくる。即座に否定しようとしたが、弓長警部が私の代わりに言葉を伝えてくれた。

「いや、雨椎さんはここの住人じゃないが、出火当時に現場に居合わせてな……通報してくれたんだよ」

その言葉を聞いて心底安心したのか、歩美ちゃんの顔が綻んでいく。「良かったぁ」と言いながら。

……良い子や。

心の中でしみじみとそう思いつつ視線を逸らすと、警部さんの手元が視界にうつりこんだ。

……日記だ。日記が握られている。多分、木馬荘を出火したかもしれないという「黄色い人」が分かったところまで進んでいるのだろう。ほら、今だって容疑者三人に事情を掘り下げて聞いている。

一人目の細井さんは、出火当時は酒に酔って潰れたらしい。よって、そのアリバイを証明できる者は誰もいない。

二人目の糸目野郎……失礼、糸目さんは気分転換にドライブをしていたとか。同じくアリバイを証明できる者はいない。

三人目の真壁さんは一人で映画をオールナイトで見ていたらしい。同じくアリバイを証明できる者はいない。

「じゃあ次は雨椎さん……出火当時のことを詳しく教えてくれ」

四人目の雨椎さんは……って、ん？

「えっ……私、ですか？」
「あぁ！出火当時のことをもう一度詳しく聞きたいんでな」

……なんてこったい。事情は、ここの住人のあの容疑者三人だけに聞くと思っていたので、一拍以上反応が遅れてしまった。……だって、「黄色い人」はあの容疑者三人の中の誰かなんだから。

というか私、調子に乗って自分のことまで紹介しかけたよね。……なんて恥ずかしい奴なんだ、私は！

顔に熱が集まるのを感じながら、しどろもどろになって出火当時のことを話した。きっと私の顔は、茹でタコのように熱を放っていることだろう。……うん、きっと美味しくない。

そんなことを呑気に思っている私は、きっと余裕があったのだろう。だって、自分が疑われるなんてこれぽっちも思っていないんだから。

甘い考えとしか言いようがないものを持っている私を罰するように、警部さんが、触れて欲しくなかった質問を投げ掛ける。

「そういや、火事があったのは夜中の二時半頃……通報されたのも、その時間だったな。あんた、そんな時間に何で外出してたんだ？」

……糸目さんと同じ質問をしないでください、警部さん。

何とも言えない心の叫びは、青空に吸い込まれていった＿。