【名探偵コナン】最強というモノ程、理不尽なことは無いと思う。 (ページ35)

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■ ページ35

「え、えっと…それは…」

核心を突かれたような質問に、どぎまぎと返答に窮してしまう。気分は年配の刑事に追い詰められている犯人だ。何も悪いことはしていないんだけどなぁ……。

「その、忘れ物を取りにきたんです」
「忘れ物……ですか。それは貴方が持っている傘でしょうか？」

糸目さんが指さしたのは、右手にある水色の無地の傘。所々傷がついていて、色もあせている。私が何度転んでも、中々壊れないので結構気に入っているのだ。……車の泥ハネからは守ってくれないけれど。

「あ、そうです。傘、置き忘れて来ちゃったので……」
「……水色、お好きなんですか？」
「えっ？」

糸目さんの唐突すぎる質問に困惑してしまう。何故そんな事を聞くのか。質問の意図を上手く読み込めないまま、おずおずと頷く。

「フッ……そうですか」

ええ……鼻で笑われちゃったよ。何故水色が好きなのか聞いてきた理由も、鼻で笑われた理由も分からないまま、疑問だけが蓄積していく。

ただいたずらに時間が過ぎ去っていき、頭の中のもやもやを晴らせずにいると、警部の部下とされる人から声を掛けられた。

どうやら、話をもう一度聞かせて欲しいらしく、ついてきてとのこと。「行きましょうか」と糸目さんに微笑まれて、大人しく従って歩いていると……見知った少年少女達の顔が。

……そうだ、私はこんな重要なことを何故今まで忘れていたのだろうか。木馬荘の焼失事件には、少年探偵団の皆さんが関わっているのだ。

まずい、とじんわりとした冷や汗が出てくる。彼らとはバスジャックの時にほんの少し関わったのだ。このまま顔を覚えられていたら、嫌が応でも知り合いになってしまう。

そうなると私の事件遭遇率は、格段にはねあがるのだ。……ただでさえ、事件に関わっているというのに！

どうしようと内心物凄く焦っていると、ふと、小さな期待が頭をよぎった。

バスジャックの事件からは、結構な月日が経っている。いくら何でも、私の顔なんか忘れているだろう。そう、忘れられて……。

「あっ！歩美のこと助けてくれたお姉さんだー！」

忘れられていなかったー！！

子供の記憶力って凄いんだね！身を持って知ったよ！

「ひ、久しぶりだねー」

ぎこちない笑みで応対する。どうやら死亡フラグは、着々と立てられていくようだ。