【名探偵コナン】最強というモノ程、理不尽なことは無いと思う。 (ページ29)

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<05…Graduatestudent> ページ29

体が沈み込んでいくような眠りから目を覚まして体を起こすと、ぐっしょりと濡れた毛先から一滴の雫がポタリと落ちて、床に跳ね返る。

「…生きて…る？」

私が目覚めた場所は、死後の世界というものではなかった。小さな水溜まりがいくつもできている廊下。足元に散らばっている血のついたタオル。

…少し荒れてはいるものの、ここは紛れもない私の家だった。

息をしている。手が動かせる。ひんやりとした床の温度が指先に伝わってくる。……生きて、いる。

確かにあの時、引き金を引かれて死んだと思った。…あの徹底主義者のジンさんが、自分を生かしておくだなんて思えなくて。

自分が生きている実感が全く沸かない。試しに、自分の頬をつまんで外側に引っ張ってみると…。

「痛だだだ！！」

……夢ではなかった。赤くなった頬を優しく擦ったあと、ギュッと服の袖を固く握る。

ポロリと目から生暖かいものが溢れる。自分が死にかけた時の恐怖感が今頃になって襲ってきたのか、生きていることに安心しているのか分からないけれど…。涙が止まらなくて、止まらなくて。

でもやっぱり嬉しいのかもしれない。

……握っていた服の袖が、破けた。

□

翌日、身支度を整えた私はドアノブを捻って、昨晩考えた教訓を呪文の如く呟いていた。

「銀髪の人を見かけたら逃げる。銀髪の人を見かけたら逃げる…」

今度会ったら本当に殺されるかもしれない。だから逃げる。取り合えず逃げる。とにかく逃げる。

ふぅ、と息を吐いて扉を開けた。コンタクトレンズを取りにいかねば。視界がぼやけているせいで、今日の朝だけでも5回は頭を壁にぶつけました。痛いです。

ヒリヒリと痛む頭を押さえながら、コツコツと道を歩く。まだ地面はじんわりと濡れていて、少し空気が湿っていた。

「銀髪の人を見かけたら逃げる。銀髪の人を見かけたら逃げる」

ブツブツと誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟いている私は、きっと不審者に違いない。でも続ける。

「銀髪の人を見かけたら…」「あの、すみません」

む、誰だ、私の独り言を邪魔する人は。辺りを見渡すが…人はいない。…私に声をかけている…のかな？

…まさか、独り言に夢中で何かを落としてしまった、とか？それはまずいと思って後ろに振り向く。…あれ、この声どこかで…。

「……」

えっ、という言葉を慌てて呑み込む。目の前には、人の良さそうな笑みをしている眼鏡をかけた男性。

「道をお尋ねしたいのですが…」

えっ。