44 ページ45
mischief 44
.
潮騒を掻き分けて、細い声に耳を澄ます
「うちの母親、なんていうか…人でなしでさ。
気付いた頃には父親はいなくて、母親は毎晩違う男を連れて家に帰ってきて…
俺はあんな人とは一緒に暮らしたくないから高校上がって直ぐにバイト始めて、卒業したらさっさと一人暮らしできるように金を貯めてたんだけど、
こないだうっかり通帳の中を見られて…」
『それで…？』
「貯まった額を見たら目の色変えて擦り付いてきて、あれだけ邪魔者扱いしてきたのに今になって出て行くなだの俺がいなきゃ生きていけないだの、
当然拒否したら今度は逆上して、通帳とカード取り上げられちゃった」
『…そうだったんですね』
「初めてこんなこと他人に話した」
『ずっと、ひとりで…』
ここにきて、彼が学校を休みがちだったことへの説明がついた
自由奔放に振る舞っていたその裏では、自分の生活を守るために頑張って働いていたのだろうか
他者には共感し得ない環境に置かれて生きてきた京本さんの実態にほんの少し近づいただけで、全く関係のない私にお節介な感情の波が押し寄せてくる
「…えっ、泣かないで。どうしたの」
『京本さんがどれだけ苦労してきたかなんて私にわかるはずがないのに、なんか悔しくて…おかしいですね、私』
「おかしくないよ。…俺の代わりに泣いてくれてありがとね」
『京本さんは、強いですね』
勝手に溢れた涙を手で拭えば、京本さんは力持ちのポーズをして私を笑わせようとしてくる
感情移入して泣くなんて女々しいことをしてしまったけれど、初めて京本さんのことを知ることができて少し嬉しかった
「ほら、アイス食べたら花火が楽しみになる！」
『…そうやってすぐ食べ物で機嫌取ろうとする』
「あ、バレてた？」
『バレバレです。食べますけど』
「ふふ、Aちゃんらしい」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 374人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
cotsu(プロフ) - IBU-00さん» コメントありがとうございます！ご期待に添えられるよう頑張ります(^^) (2020年4月23日 20時) (
レス) id: 73a5756da2 (このIDを非表示/違反報告)
IBU-00(プロフ) - コメント失礼します！お話の内容がとても良くて、続きが気になります！更新楽しみに待ってます(*^^*) (2020年4月23日 19時) (レス) id: 6e2ff889a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：cotsu | 作成日時：2020年4月22日 23時
