ああもう、違うんだって_kwkm ページ9
「はー…」
やってしまった。
また、Aが傷つくようなことを言ってしまった。
流石に今回は度が過ぎていたかもしれない、須貝さんにも怒られたし。
愛想つかされてしまったらどうしよう、あの笑顔が俺に向けられなくなったら、もう俺はどうしたらいいのだろう。
「落ち込むなら、最初からしなきゃいいのに」
「…河村さん…」
「まぁ、僕にはそーゆーのわかんないけどさ」
「…分からない方がいいですよ、こんなこと」
河村さんには絶対分からないだろな、好きな子に意地悪をしてしまうとかいう、こんなに幼い気持ち。
もういい歳なんだから素直になればいいのに、どうにも俺の口は言うことを聞いてくれないようで。
「川上ってさ、Aさんのこと嫌いなの?」
「嫌いじゃないっ…」
「じゃあ好きなの?」
「すっ、…好き…じゃない…」
「じゃあなんで付き合ってんのってなるから、嘘つかないで」
「好きなんでしょ?ほんとは死ぬほど好きなんでしょ?」
「…好き、です…」
そう答えると、河村さんは呆れながら笑いながら言った。
「どうして川上は素直になれないのかねぇ、全く」
「そんなの、…知らないっすよ」
そんなの、Aが素直にド直球に好意を伝えくるからだって。
素直になられちゃあ、こっちが死ぬほど恥ずかしくなるじゃん。
死ぬほど恥ずかしくって、恥ずかしがってる自分を見せたくなくて、突き放してしまったり、冷たい言い方しちゃうんだよ、きっと。
「かわかみぃ〜、Aさんめっちゃ落ち込んでたけど、またなんかしたの?」
伊沢さんが、珈琲片手に俺のデスクに向かってくる。
「しっ、してないっ…!」
「あー絶対なんかしたな」
「川上ったらまーた酷いこと言っちゃったんだって」
「あ〜、やっぱり」
「はいはい、Aさんに愛想つかされる前に言ってきな」
「えっ、な、なにを…」
「それは自分で考えてよ。ほら、立って!」
「Aさん給湯室に居るよ」
なんて、話はどんどんと進んでいき、俺は2人に急かされて何も考えがまとまってないまま給湯室に向かってしまった。
「…あ、川上君…」
給湯室に居たAは誰が見てもわかるくらい落ち込んでて、マジでやりすぎた、と後悔。
「え、あ、あの、」
「川上君って、さ」
俺が言葉に詰まっていると、Aがそう口を開いた。
「え、なに」
「…ううん、なんでもないよ」
そう言ってどこか無理やりに笑顔を作ったAは、給湯室から出ていこうと歩き出した。
「っ…」
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作者名:うゐ | 作成日時:2022年7月11日 16時