先輩！立場が危ういです！□nb ページ2
「…ほんとにごめんねぇ、ノブ君」
「いや、大丈夫ですよ。気にしないで下さい」
私の隣を歩くノブ君は積み上げられたダンボールを持っている。
最近オフィスの引越しがあって、今遅れて到着したダンボールを執務室へ運んでいるところだったのだが、いかんせん重い。
ダンボール1個でも相当な重さで、中身なんなんだよ、と思ってしまうくらい。
6つあって、今1時間半を使って運んだ数は3つだけ。
半分いっただけでも褒めて欲しい。
腕が痛いんだよ、なんせ。
ノブ君もひとつ持って、結構重いですねって言ってたもん！
でも隣を歩くノブ君の顔は平然としてる…。
「大丈夫ですか？一旦置きます？」
「ううん、もうちょっとだし…」
なんて気遣ってくれる、因みにこれを聞かれたのは4回目、この事からもわかるようにノブ君は凄くいい人だ。
これは私が保証する。
でも最近、ノブ君がしっかりしすぎてて、私の「先輩」という立場が危うくなっている。
ノブ君と私は3歳差で、私は先輩としてノブ君に色々教えてたの。
それも今や昔、今はもう何も教えることはなくて、寧ろ最先端を行くノブ君に私が教えて貰っているくらいだ。
前だってほら、
「んー、…ここ圧縮ファイル作れないなぁ…なんでだろ」
「あ、Aさん、どうかしたんですか？」
「いや、圧縮ファイル作れなくて…なんでだろ」
「あぁ、ここはこうしないと…ほら、これで」
「わぁ、ありがとう。頼りになるねぇ、ノブ君は」
「いや、そんな事。全部Aさんのおかげですよ」
みたいな事あったし。
て言うかこんなこともう何回もあるし。
いつの間にか私が何もかも手取り足取り教えていたノブ君は居なくなっていて、なんだか寂しい気持ちにも。
「あーぁ…寂しいな…」
ノブ君が最後の取ってきます！と元来た道を戻ってしまって、1人残された部屋でそう呟く。
いやいや、成長はいい事だもん、寂しいなんて言ってられないよ。
「なに、何が寂しいの？」
「あっ、須貝さん…」
独り言が聞こえてたようで、須貝さんがどうしたの、と。
「いや、…それが、ノブ君がしっかりしすぎてて、今じゃ私が何もかも教えられる側になっちゃってて。もう「教えてください」なんて聞いてくれる事も無いんだろなって思っちゃったら少し、寂しいなぁって」
「いつか私の手の届かないとこに行っちゃって、後輩でも、なんでも無くなるのかなぁ…って」
すると須貝さんは少しの沈黙の後、口を開いた。
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作者名：うゐ | 作成日時：2022年7月11日 16時
