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其れから数日後。
太宰が来ない日は、森の手伝いをしていたAは、今日もまた、森を手伝っていた。

「__最近、患者が増えてるね」

Aが、血の染み込んだガーゼを片付け乍ら、森に云う。
森は視線を、何かの資料からAに移す。

「ポートマフィアが暴動を起こしているからねぇ」

染々とした口振りで、森は答える。

Aはガーゼを片付け終えて、手を洗い始める。

「マフィアの首領は、荒ぶっている人と聞いた。……大丈夫?」

「……どう云う意味だい?」

Aは手を拭き、近くの丸椅子に座ると、クルリと回り始めた。

「先ず前提として、ヨコハマはマフィアが居る事で、均衡を保っている……此所までは合ってる?」

「均衡?」

森が興味深そうに視線を送る。

「マフィアは現在進行形で、ヨコハマを崩壊させている。
けど、マフィアを潰そうと動く輩の所為でもある。
そうした輩はマフィアによって潰されている」

「どう?」と確認を取るAに、森はニコリと笑った。
Aは、其れに笑い返した。

互いに読めない笑みだ。

「__でも幾ら圧倒的武力を持ち、勝ち続けていたとしても、無傷じゃない。
傷は負い続けている。
そして其の傷の儘、マフィアは暴動を繰り返し、傷に傷を重ねる。
……自滅に向かっているんだ」

ぴょん、と椅子から飛び降りて、Aは森を見る。
森は静かに、Aの話に耳を傾けていた。

「マフィアが自滅して、消滅後、ヨコハマはどうなるか。
平和になる、と云うのは勿論、不正解」

Aは口の前で指を交差させ、バツ印を作る。

「マフィアの存在によって集まった闇は、散る事無く、逆に増加する。
今のマフィアが存続し続けても、消滅したとしても、ヨコハマが向かう先にあるのは『崩壊』」

手を下ろし、静かな瞳で訊く。
其の瞳は光を通さず、何もかもを見透かす様に、深い深い所を見ていた。

「そして、リンタロウは其れを善しとしていない。
どう行動すれば佳いのかは、もう導き出している。
……リンタロウは、其れで大丈夫なの?」

常人が見れば、何とも云えない恐怖を感じるだろう。

森も同様の様で、頬に一筋の汗が伝わる。
そしてゴクリと渇いている喉を鳴らした。

けれど次の瞬間、森は微笑んだ。

「そうだ。Aちゃんの云う通り、最適解は導き出しているよ。……覚悟もある」

森はAの頭に手を乗せ、優しく撫でる。

「心配してくれて、有り難う」

__
会話文ばかりですみません。

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作者名:日之静海 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年9月13日 21時

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