四十。 ページ45
「__『太宰治、瑞香A。上記の者を五大幹部に任ずる』」
瑞香は文章を読み上げ、森へと視線を戻した。
森は頬笑みを浮かべて云う。
「龍頭抗争での君達が上げた功績は素晴らしいものだった。其れ以前の功績も含めると、充分過ぎる程だよ」
それに、と森は真剣な顔になり、二人を一瞥した。
太宰も瑞香は其の視線に、無表情で返す。
「此れからのヨコハマやマフィアには、二人の力が必要なのだよ」
「……そうですか」
「……」
二人は無感情に返事をした。
顔は何処か退屈いる様に見える。
そんな二人を見、森はふと訊ねる。
「……澁澤龍彦について、どう思ったんだい?」
其の瞬間、太宰と瑞香は目を細める。
流れる空気が、少しだけ変わった。
「……別に、何とも」
「……Aちゃんは?」
「私も……特に何とも思っていません」
部屋に沈黙が訪れる。
森と、太宰、瑞香は、互いに探りあう様に見ていた。
太宰と瑞香には、森が何を訊ねようとしているのかが判らなかった。
森は読めない顔をしている。
しかし、次の瞬間には笑みを浮かべた。
此の笑みも、深い所まで読み取れない。
「そうかい。……知っている通り、幹部になると、部下を一人就ける事が出来る。別に就けなくても善いけどね。どうするかは任せるよ」
森はそう云った後、「此れから宜しく頼むよ」と云った。
太宰と瑞香は首肯くと、其の儘帰っていった。
二人は終始、詰まらなさそうな顔をしていた。
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作者名:日之静海 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年9月13日 21時