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三十九。 ページ44

時は、龍頭抗争終結、数日後。

「あら、久しぶりね、A!」

「久しぶり、エリス」

赤いドレスを着たエリスが、瑞香に駆け寄る。
瑞香は笑う。

「A、大きくなったわね」

「うん。太宰のお蔭だよ」

……そんな朗らかな会話が、ポートマフィア本部ビル最上階、首領室で行われていた。

本日、瑞香は首領である森に呼び出された。
本当は太宰も喚ばれているが、瑞香は少し早く来た。
そして、森がエリスを追い回している現場に遭遇。
エリスは森を無視し、久しぶりに逢った瑞香と話し始めたのだった。

「失礼します」

叩敲(ノック)の音とともに、声が聞こえる。
瑞香とエリスは扉へ視線を送る。

扉が開かれ、向こうから太宰が現れたのだった。

エリスは太宰を確認すると、瑞香の方へ向き直る。

「またね、A」

「うん、またね」

エリスが手を振り、瑞香も小さく振り返す。
そしてエリスは隣室へと這入っていった。

「……首領」

瑞香は表情を改め、森に向き直る。
手は何時の間にか、太宰と繋がれていた。
森は苦笑した。

「前みたいに『リンタロウ』と呼んでくれて構わないのだよ?」

「そういう訳にもいかないですから」

無表情で、けれど何処か淋しげに、瑞香は云う。

「……そうかい」

森は残念そうに息を吐く。
そして次の瞬間には、雰囲気を一変させていた。

「先ず、龍頭抗争中の任務や、龍頭抗争首謀者討伐任務、ご苦労様」

森は労う。
瑞香と太宰はお辞儀した。

「首謀者、澁澤龍彦の死亡は不明。けれども失敗ではないよ。目的は抗争の終結だからね。終結できたのなら、それで善い」

「……澁澤は放置、ですか?」

瑞香は訊ねた。
しかし其の表情では、答えも理由も知っている様だった。

けれども森は厭な顔一つせず答える。

「問題がないのならば、それで善い。……それに、抗争の影響でヨコハマは荒れた。其方の鎮圧の方を優先しないといけないからね」

ヨコハマは現在、抗争で生き残った組織が、ヨコハマの至る処で暴れていた。
マフィアの縄張りで暴れる者も居る。

其れを赦してしまっているのも、マフィア内での管制が崩れかけているから。

問題は多いのである。

「……却説、ここからが本題だ」

森は一枚の紙を差し出す。
瑞香は其れを受け取った。
太宰にも見える様に持つ。

「……矢張り、そうですか」

太宰はそう呟いた。
瑞香は何も云わないが、思っている事は一緒らしい。

何が書かれているか。
其れは__

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作者名:日之静海 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年9月13日 21時

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