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三十八。 ページ43

太宰はあさっりと告げると、瑞香と息を合わせて指をパチンと鳴らす。
すると、二人の手錠は同時に外れた。

最初から態と捕まっていただけだった。

悠然と歩きだした三人の元へ、仮面の男達が集まる。
敵は未だ残っていた。

「ゴミがぞろぞろと……」

「ちゃっちゃとやっちゃって。想定内でしょ」

再び喧嘩になりそうな二人に、電撃を腕に纏わせる仮面の男が現れる。
先刻の異能力者だ。

「そう云やあ、手前には借りがあったな」

殺気をこめた眼差しで、中原は異能力者を睨みつけた。

強い衝撃が屋上を襲い、仮面の男達は、中原の異能力によって圧殺された。
砂埃が舞う。

三人は死 体の山を見ず、ビルの内部の目当ての男へと進んだ。

***

鼠が走った跡が残る、誇りが溜まった廊下。
其れを三人は進み、広い部屋へと出る。

事務机や棚は隅へと追いやられ、蛍光灯は点滅し、書類等は辺りに打ち捨てられている。
部屋の中央は、天幕の様な、不審な空間が広がる。

「__手に入る、手に入らない、手に入る……」

部屋では、ぶつぶつとした声が聞こえる。

発信源は、一人の男。
白い肌、白い髪、赤い瞳。

其の美しい容貌を持つ男は、札束や宝石を、火を熾したバケツに投げ込んでいた。

此の男が目当ての者。
龍頭抗争の原因の一端となった男だ。
名は澁澤龍彦。
澁澤を倒せば、龍頭抗争は終結する。

「__……手に入らない」

澁澤は残念そうに吐息をついた。
投げ込む物は、もう無いらしい。

「こんな占いばかり当たっても、全く嬉しくない」

矢張り欲しいものは手に入らないか、と澁澤は嘆く。

そんな澁澤に、中原は一歩進み出る。

「……俺の仲間を返せ」

中原は静かに云う。
澁澤はあたかも今気付いたかの様に、顔を上げた。

「ようこそ、退屈なお客人。どうせ君達も、私の欲する物を与えられはしない……早々に死に給え、彼等の様に」

無感動な眼差しを向け乍ら、澁澤は云う。
そして霧が立ち上がり、六人の死 体が現れる。

中原は目を見開き、息を呑む。

「君の友人は皆殺 したよ。退屈な人間は死 んでも退屈だ」

「手前ェ!」

感情を失ったかの様に淡々と告げる澁澤に、中原は怒りを向ける。

手袋は弾け飛び、顔や腕には異能痕が走る。
そして中原は、異能を解放する。

「止めるなよ」

中原はそう告げて、澁澤と向き合う。

破片が砲弾の様に飛び散り、恐らく最後になるだろう其の戦いは、幕を開けた。

__
最後、中也の独壇場でしたね……。
ごめんなさい。

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作者名:日之静海 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年9月13日 21時

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