三十三。 ページ38
よく思い出したら、彼のシーンがあったじゃあないか!
……と云うわけで、未だ書きます。
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三人は道路を歩いていた。
油と鉄錆と血、そして火薬の臭いを引き連れている。
三人は其々に荷物を持っていた。
「所持品が沢山、写真も沢山!」
瑞香は、紐で幾つか括られた写真の束を持っていた。
瑞香の隣には、太宰。
そして反対側にはもう一人。
赤髪と砂色のコートが特徴の、太宰より頭一つ分背が高い男性だ。
ポートマフィアの最下級構成員、織田作之助だ。
「……所持品、幾つか持つよ?」
瑞香が無表情で織田に視線を送る。
しかし、目は気遣う様に見ていた。
「否、いい。写真を持ってくれていれば、それで」
織田は荷物を見て、瑞香に視線を戻して云った。
瑞香は「そう……」と返すと、今度は太宰を見た。
瑞香が何かを云う前に、太宰は云った。
「私も大丈夫さ。……それに、直ぐ其処だ」
太宰が前にある建物__会計事務所を見た。
瑞香は駆け寄り、入口の扉を開ける。
太宰と織田も続く。
瑞香は其の儘奥へと進み、本棚を横に引く。
現れたのは扉。
瑞香は
そして、其の儘隠し部屋へと入った。
「其れ以上、近寄らないで頂けますか。臭うので」
三人が入った途端、部屋の主は肘をつき、不機嫌そうな顔で云った。
部屋に奇妙な沈黙が落ちる。
丸眼鏡に背広という、学者然とした出で立ちの男だ。
マフィアの専属情報員だ。
「確かに、鼻を切り落としたくなる様な臭い。……許して?」
瑞香は苦笑いをして云った。
三人は、横浜租界の廃棄物投棄場で、死 体の片付けを行っていた。
其処で銃撃戦が行われたのだ。
所持品回収は、警察等に組織犯罪防止法の証拠を採らせない様にする為である。
序でに云うと、瑞香は銃撃戦にも参加した。
おかげで三人は、泥と油だらけ。
瑞香の喩えは正しいものである。
彼は、瑞香の笑みは無視し、全員を一瞥。
そしてぞんざいな口調で云った。
「死体の所持品を机に置いたら退がって。僕が質問するまで黙っていて下さい」
織田は云われた通りに行動した。
しかし、太宰は一方的に話し始めた。
瑞香の方は、部屋についてぶつぶつと呟いている。
彼は遮る様にして、黙ってと云った。
少年や少女の見た目ではあるが、二人は次期幹部の最有力候補。
其の態度に、三人は茫然と坂口を見ていた。
しかし、彼は其の視線を気にせずに、渡された物を一つ一つ検分し始めた。
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作者名:日之静海 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年9月13日 21時