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おおかた予定通り撮影は進み、他のメンバーよりも少しだけ早くあがらせてもらえた。
それでも、家にたどり着いたのは、日付が変わる直前で…。
長い１日を終え、クタクタの体でリビングに入ると、そこに優衣の姿があった。
「あ。おかえり。お疲れ様」
「おぅ。おつかれぃ」
「…はなちゃん、ぐっすり眠ってるよ」
「今日、ありがと、本っ当助かった」
「おりこうだよね〜、はなちゃん」
「そう？」
「誰だかわからないよーな、見慣れないこんなおばさんと一緒でも文句の１つも言わないで、ニコニコ笑って。かわいすぎるよね」
「人見知りしなかった？」
「ううん、全然。本当親孝行な子だなって思う」
話を聞きながら、冷蔵庫の中のピッチャーを手に取り、グラスにお茶を注いで、ソファの前のテーブルに置く。
「よかったらどぉぞ」
「うん、ありがと」
微笑んでみせた後、優衣はお茶をひと口飲んだ。
「…おいしー。これ何茶？」
「それ？ただの麦茶」
「え、そうなんだ。うちも麦茶だけど、こんなにおいしくないよ。何が違うんだろー」
「てか、麦茶でそんなに喜んでもらえると思ってなかったわ」
「だってめちゃおいしいもん」
なんか、わかんないけど楽しい。
麦茶なんて他愛もない話題で、こんな嬉しい気持ちになるなんて。
「薮。もうすぐ迎えに来るよ」
「ぅん、そうだね」
時計の針は深夜0時20分を指している。
ピロンっ。
調度その時、LINEの着信音が鳴った。
「あ、あたしかな？」
急いで携帯をチェックする優衣。
「おっ、薮くんだ」
「…着いた？」
「えっ！…ううん。なんか…事故で渋滞してるからもう少しかかるって」
「おーまじか」
「このままいてもなんだし…あたし外で待ってようかな」
「…うん」
そう返事をしたものの、なぜだか釈然としない。
なんだろ、この感じ。
「忘れ物なかったかな」
優衣はまとめた荷物を持って、辺りを見回してる。
「よしっ。じゃ、あたしはこの辺で…ひか…」
「なぁ優衣」
気づいたら、優衣の手首をつかんでた。
「ん？なに？」
「もうちょっと…ここにいてくんないかな？」
帰ってほしくない。そう思った。
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作者名：青空 | 作成日時：2018年6月14日 23時
