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耳を疑った。
だって。
彼女にプロポーズしようとしてる男が浮気なんてする？
しかも薮に限ってそんなことする訳ないだろうと、思いたかった。
「俺、見た訳じゃないからはっきり言えないけど…。それ、なんかの間違いじゃね？」
優衣はまた首を横に振った。
「この間、知らない女と二人きりでごはん食べてるとこ…偶然見ちゃったんだよね」
「友達か、仕事関係の人間じゃないの？」
「違うよ、多分…」
「ほら。あいつ、結構交遊範囲広いし」
「ポケットにあったんだ。領収書が…」
「え？」
「ホテルの、領収書…」
「…うそだろ」
信じがたい話を耳にして、ため息が漏れる。
「だから…なんか。私も同じことしてみよっかなと思って」
優衣は甘えた声で、俺の肩に寄りかかってきた。
「…あのさ…」
「光のこと好きになっちゃおうかなぁ」
「…優衣」
「ね、休憩しに行かない？」
「なんでそうなんの」
「光と寝たいから」
「…ごめん」
背中に軽くぽんっと触れると、俺の肩からゆっくりと頭を離した優衣。
「…やな女だよね、私って」
「あ？」
「私がなんで薮くんとつきあったか知ってる？」
「あいつのこと好きだからだろ？」
「違うの…。少しでも光のそばにいたかったからだよ」
「は、何言ってんの」
「偶然再会してから、ずっと気になって。好きなのかもって…」
頭の中が真っ白になる。
全然意味がわからない。
そんな風に思われてるなんて、思ってもみなかった。
「でも光には大好きな人がいたし。あの時は、自分の気持ちに気づかないフリをしてた。
ただ、薮くんを…好きなフリをしてただけ」
「なんでだよ…」
「正直、光の奥さんいなくなって、すごく動揺した。もしかしたら、チャンスかもって。
そんな最低な女なんだよ、私。
だから、嫌われて当然だし、これ以上、薮くんとつき合う資格なんてないの」
それを言いきったあと、泣きながら"ごめん"と呟いた。
涙がぽろぽろこぼれ落ちる様子を、俺はただ横で静観するしかできなかった。
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作者名：青空 | 作成日時：2018年6月14日 23時
