鵺は今宵も哀しく鳴く２

八十四 ページ43

西条side



なんでなんでなんでなんで



なんで、分かるの



私が人気者になるために、踏みつけて、踏みつけて、それでも私に救いの手を差し伸べてきたこいつ。



ウザったいし、私なんて見捨ててもうあんたに冷たくない選手たちと青春を送ってくればいいのに


こいつの目には、私があれほど罵ったあの目には、私に対して負の感情が一片も写っていなかった。



ただただ、私を助けようとしてくれている。



こんなことは、人生で初めてだ。



矢巾さんに手のひらを返されて、花巻さんや松川さん、及川さんにも見捨てられた。



唯一庇ってくれたのは岩泉さんと、こいつ。



こいつの事は憎い。私から全てを奪ってきたから。



でも、もしかしたらこいつは私が変われるチャンスを与えてくれたのかな



そうだったら今、私は変わってもいいかな



願わくば、皆に本当の私を見てほしい。



その為に私は私を見せる



「あんたの過去は聞いたから、私の事を聞いてくれる？あんたと違ってそこまで刺激は無いかもだけど」



化粧が涙で落ちて、どろどろになった顔を拭い、私はこいつを、鵺鳥Aを見据えた。



もう、逃げない

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