【ヒロアカ】にちりんのひめ (ページ47)

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混乱の行き着く先ページ47

「連れがいたのか。ごめんごめん」
「ーー……っえ…」

パッとボクから手を放した弔さんは、緑谷くんに笑顔を見せた。
ポカンとしているボクをよそに立ち上がり、去ろうとする。足の間に座らされてたボクは、そのまま前のめりになって、地面に倒れた。

「じゃあまたな」
「あっ…」
「於野さん！大丈夫…？」

膝をついたボクに駆け寄った緑谷くんは、介抱しながらも弔さんを見つめる。その目には警戒の色が滲んでいた。
弔さんは人混みに紛れ、その背中が見えなくなっていく。

「於野さん…今の人って…」
「ッ…弔さん…待って…！」

追いかけなきゃ。ボクはもっと知らなきゃ。あの人が、ボクの何かを知っているというのなら、少しでも何か手がかりがあるのなら、ボクはーー！

「於野さん！待って！落ち着いて！」
「何を知ってるの…あなたは、ボクの何を…！」
「っ…於野さん！」

緑谷くんが引き止めるのも構わず、消えていった背中を求める。意識をこちらへ戻そうと肩を揺さぶられていると、そこへお茶子ちゃんも駆け付けた。

「デクくん！Aちゃん見つかった？」
「麗日さんっ！警察に連絡を！さっき死柄木が於野さんにっ…！」
「えっ…死柄木、って…」
「とにかく早く！」
「わ、わかった！…もしもし警察ですか！？今敵(ヴィラン)が！はいっ、えっと木椰区の…」

お茶子ちゃんが警察に通報する間、緑谷くんがボクに呼びかけても、それを聞き入れることはなかった。

どうしてあなたは、ボクの知らない事を知っているの。何故教えてくれないの。
ボクがヒーローになるなんて言ったから？あのままあそこにいれば、いつか教えてくれた？

ぶつけたかった疑問はどこにも届かないし、誰も答えてくれない。
緑谷くんの腕の中で、ボクは雄叫びを上げた。

「何で…どうして…誰も教えてくれないのーー弔さん！！！」

＊＊＊＊＊＊＊＊

お茶子ちゃんの通報により、ショッピングモールは一時閉鎖された。区内のヒーローと警察が緊急捜査にあたるも、結局弔さんは見つからなかった。
ボクは事件の被害者として警察署へ連れられ、事情聴取を受けた。
先の雄英襲撃や保須事件により、警察は敵(ヴィラン)連合に対し、特別捜査本部を設置し、捜査にあたっているらしい。その捜査に加わっている塚内さんに、弔さんの人相及び会話内容を伝えた。

だけどーーボクの昔の記憶に関する事だけは、話さなかった。
ボクはモヤモヤを抱えたまま、帰路に着いた。