【ヒロアカ】にちりんのひめ (ページ37)

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痛みを超えて【緑谷side】ページ37

紋様のような火傷。それが、於野さんの背中にある。

「リカバリーガール…どうしてそんな話を？」

それがまさか、『神威(カムイ)』と関係があるのか？
険しい表情のままのリカバリーガールに問う。

「その火傷はね…“個性”を受け継ぐために負ったものだ。『神威(カムイ)』を継ぐ次代の巫女は…先代から背中に焼印を押され、体にその紋様を焼き付けなければならないのさ」
「「「「！！！」」」」

クラス全員が、衝撃の事実に固まった。
あの於野さんが。いつも屈託のない笑顔を浮かべて、いろんな人を癒してくれる彼女が。
驚きのあまり、何も言葉にできない。

わかっていたつもりだった。於野さんは僕らのクラスメイトであると同時に、ヒーロー社会の象徴とも言える唯一の存在だということを。本来なら、こうして友達のように接することはできないはずなんだと。

受け継ぐ“個性”…ワン・フォー・オールと同じ系統の“個性”。だけど…僕の場合とは、全く違う。
先代は、おそらく母親だろう。於野さんは子供の頃に神社が火事になって、その時に敵(ヴィラン)連合に誘拐されてるから…受け継いだのは、少なくともそれ以前の話のはず。

そんな幼い時に…背中に焼印を…
考えるだけでも、辛い気持ちになった。

「……………………」

隣で張り詰めた表情の轟くんは、左手をジッと見つめている。

「…だからか。ヒーロー殺しと戦った時…俺が炎を出す度、於野の動きが少し遅くなってた。あの時は気付いてやれなかったけど…今わかった。於野は、炎が苦手だったんだな」
「轟君…」
「そんな…あれは轟くんのせいじゃ…」
「俺…アイツにひどいことしちまってたのか。アイツの兄ちゃんなのに」
「……………………」

轟くんが於野さんのお兄さんかどうかは別として、すごく後悔してるようだった。
確かにあの時はみんな緊張状態だったから、そんな所まで気付けない。むしろあの状況で堪えた於野さんはすごいと思う。

…そうか。体育祭でかっちゃん戦でのあのプレッシャー…あれは、於野さんのトラウマが呼び起こされたせいで、“個性”のコントロールができなくなっていたのか。かっちゃんの『爆破』で軽い火傷を負って…それが、背中の火傷の時と重なって。

そんな痛みを背負って…彼女は戦ってたのか。

トラウマになるほど、心身共に傷ついて。
そんな思いをしてまで…どうして於野さんはヒーローに…？