【ヒロアカ】にちりんのひめ (ページ35)

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神威【緑谷side】ページ35

『ひぎゃあああああああ！！！』

一際甲高い悲鳴を上げ、大泣きしながら、於野さんは必死にオールマイトから逃げ回っていた。

…僕が言うのもアレかもしれないけど、於野さん大丈夫かなぁ…

あっ…！オールマイトが於野さんにパンチを…！
躱せない、と判断した於野さんは、キッとオールマイトを睨んだ。

「危ない！」

その時、於野さんとオールマイトの間に、透明な膜みたいなものが張られた。

いや、膜…という表現は、少し違うかもしれない。
あれは膜というより壁だ。オールマイトの攻撃から於野さんを守る防壁のようだ。

これは…体育祭で、芦戸さんやかっちゃんに使ったものと同じ…

「アレが、あの娘のもう一つの“個性”さ」
「え…？」

リカバリーガールが、目を細める。

「あの娘が生まれた神代神社には、昔から代々受け継がれる“個性”があってね。その名は『神威(カムイ)』。あの娘が認識する“力”のベクトルやエネルギーを操る“個性”さね」
「受け継がれる“個性”…？」

それって、『ワン・フォー・オール(僕の“個性”)』と同じ…

「そんなものが存在するんですか」
「しかもベクトルやエネルギーを操るって、無敵じゃねーかよ！？」

なるほど、超能力にも似たあの力も説明がつく。
あの防壁とか、プレッシャーも…力の流れを操ったとすれば、納得がいく。

すごすぎるぞこの“個性”は…！
認識する、ってことは力が存在すると考えることだと解釈すると、重力や浮力などあらゆる力学的な要素を操れる、ってことだよね！？

「なるほど…於野さんの“個性”が力と認識するものを操れるなら、彼女が空気の流れや熱などを『力』と認識した時点でそれは操れる対象になるってことだよな。それってものすごく汎用性の高い“個性”じゃないか…！今までの様子からして操れるのは空気や攻撃の力のみみたいだけど、もっと彼女が他の力を意識したら最強じゃないか…！？」
「うおおっ」
「やっぱ出たなーブツブツ」

「最強ね…そんなもんじゃないよ、あれは」

その言葉に、再び僕らの視線がリカバリーガールに集中した。

「あの娘の“個性”は高い集中力を要する。使えば使うほどその負担は脳にかかり、最悪意識を失うこともある。そしてそれは積み重なり…体を蝕んでいく可能性がある。アンタ達は見たことないだろうけどね、あの娘の背中には…大きな火傷の痕がある。まるで紋様のような傷痕がね」
「火傷…？」
「！」

それに、微かに轟くんが反応した。