彼女の謎【緑谷side】 ページ34
試験会場と中継で繋がっているモニタールームで、みんながハラハラしながら画面に映る於野さんを見守っていた。
「Aちゃん大丈夫かな…？相澤先生だけでも強いのに、オールマイトまでおったら敵わんのとちゃう…？」
「戦闘訓練の時も思ったけどよー、於野だけ難易度高くね？流石にプロ二人相手に勝てるわけねぇって」
「何か意図があってのものだと考えられますが…」
「戦闘は避けたとしても、捕縛に長けた相澤先生と、圧倒的な力で捩じ伏せるオールマイト…於野の“個性”もトリッキーとはいえ、それだけで翻弄できるとは思えない」
「筆記受からせてやったんだぞコラ。これで落ちたらあのアホ女殺す」
「やめろ」
「…いや、勝ち目はあるかもしれない」
研究ノートにメモをとりながら呟く。
ボソッと発された僕の発言に、みんなの視線が集中した。
「どういうことなの緑谷ちゃん」
「この試験で、於野さんは植物や動物を生み出す“個性”には頼れないはずなんだ。それでいくら相手にとって有効な手を生み出したとしても、あの二人に敵うとは思えない。だから……体育祭の時に、芦戸さんやかっちゃん相手に使ったあの不思議な『力』を使うんだと思う」
「あー、体育祭の時のあのプレッシャーな。アレすごかったよなぁ。俺びっくりしたもん」
「私の酸が防がれた時のアレねー！」
「……しかし妙ではないか？」
僕の隣で、腕を組んで考え込んでいた飯田くんが、ふと口を開く。
「『個性』は一人につき一つは発現するモノだろう。では於野君の“個性”は二つ存在するということか？」
「！」
そう、問題はその点なんだ。
僕は彼女について、昔
「確かに…言われてみればそうだね」
「やっぱり神代神社の巫女だから、いろいろ特殊能力とかあるのかなー？」
「………………」
飯田くんが出した疑問に全員が同調し、様々な意見を交換し合う。
その時、今までモニターに映る於野さんを見つめていたリカバリーガールが言った。
「特殊能力なんかじゃないよ。アレは“個性”さ。…尤も、あの娘自身がどう思っているかは別としてね」
「“個性”…？」
「どういうことですか？リカバリーガール」
ドォォン！と大きな音が、部屋の音響機器から聞こえる。それまで身を隠しながら走っていた於野さんが、オールマイトに見つかった。
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作者名：ミサ | 作成日時：2019年8月29日 3時
