聖女 ページ4
どうしたか、彼から目が離せない。
何故だ。この目は一体何だ？ボクにはわからない。
「何を、言って…？塗り潰した…？」
「そうだ。貴女は…いや、正確には貴女の
「……『聖女』…？」
ボクのご先祖様が…？そんな話、今まで一度も聞いたことない…
…アレ？待って。
そういえばボク…ボク以外の家族の事、何も知らない…
「だが、この社会は、『聖女』を囲い込み閉じ込めた。永遠に…やがて貴女の存在は都合の良い美談として広められ、現代のヒーロー社会の生贄にされた……」
不意にヒーロー殺しに肩を掴まれる。ハッと顔を上げると、さっきより色濃くなった感情を剥き出しにして、ボクに迫った。
「俺は許せない……！真の“
「いッ…！？」
置かれた手に、力が込められる。
痛い。痛いよ。何？何を言いたいの？この人は…！？
「俺は、貴女を救う」
「…！？」
「誰が為にその身を賭し、力を振るい、何も見返りを望まない…！
ーーヒーローは、貴女のようにあらねばならない！！」
「ッ！」
さっきよりも強い気迫がボクに迫る。
この人に何があったかなんて、ボクは知らない。
知らないけど、でも、この人はボクに対して何かを求めてるんだ。
何で。どうして。そんな疑問すら、口にする事も出来ない。
この人から…目が、離せない。
「…………離っ、れろぉ！！」
緑谷くんの声で、ハッ、と意識が戻る。
牽制で放ったスマッシュは躱されたものの、緑谷くんはヒーロー殺しに目もくれず、ボクに手を差し伸べた。
「於野さん、立てる！？」
「うん、大丈ーー」
言い切る前に、緑谷くんの背後にいたヒーロー殺しが彼の足を浅く切った。
「っぎゃ！」
「緑谷くん！？」
刀についた血を舐めると、緑谷くんの体が崩れ落ちる。
ヒーロー殺しは、狙いを轟くんに再び定めた。
「ごめんっ、轟くん…！」
「轟くん！！」
このままじゃ、轟くんが危ない。策も何も無いけれど、とにかく動いた。
動けず後悔したくない。轟くんを守りたい。
やだ。駄目。轟くんが斬られちゃう。
だけど、遠い。届かない…！
「轟くんッ！！」
ボクが叫んだのと、倒れていた飯田くんが駆け出したのが、同時だった。
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作者名：ミサ | 作成日時：2019年8月29日 3時
