ワン・フォー・オールの話 ページ20
着替え終わり、休み時間。更衣室から出て間もなく、ボクは緑谷くんに呼び止められた。
「ちょっといいかな」と手招きされ、緑谷くんに近寄る。
「どうしたの？」
「いや…実は、その…」
何か戸惑うように、眉を下げて目を泳がせる。どうしたんだろう。
……あ。なんかわかったかも。思い切って、切り込んでみる。
「…もしかして、オールマイトについて？」
「！！なっ、何でそれを…」
「てことは、当たりなんだね？」
「え…あっ！」
しまった、と言うように緑谷くんは口元に手をやる。…もう遅いよ、緑谷くん。
おおよそ理解出来たぞ。緑谷くんはオールマイトに呼び出されてて、それにボクも連れてくるように、って言われたんだろう。だけど、緑谷くんはボクが「ワン・フォー・オール」を知っている事を知らない。だから、秘密がバレないように、と注意を払っている。
「わかった。じゃ、一緒に行こうか」
「え…でも、あの…」
「……緑谷くん、あのね」
オールマイトも伝えるの忘れてたのかな？
仕方ない、ボクから教えよう。
「ボクね、知ってるよ。君が彼から明かされた秘密」
「…えっ？」
「きっとオールマイトも多分伝え忘れちゃったんだろうね。でもね、大丈夫。ボクも、君と同じ
そう言ってニコッと微笑むと、安堵した表情に変わった。
「そうだったんだ…知らなかった」
「仕方ないよ。それより行こっか。呼ばれてるんでしょ？」
「…うん！」
緑谷くんと一緒に向かったのは、雄英高校でも滅多に人の来ない仮眠室。なるほど、ここを秘密の会合所にしてたんだ。
そこのドアを開くと、テーブルを挟んで丸椅子とソファが置かれている。ソファの真ん中に、オールマイトが神妙な面持ちで座っていた。
「掛けたまえ」
ボクらの方を見向きもせず、そう告げる。
いつものおちゃらけた雰囲気とは違う…真剣な話であることを感じ、席に座る。
「緑谷少年、於野少女も…色々大変だったな。近くにいてやれず、すまなかった」
「いえ…あれは仕方のない事でしたから」
「そうです、オールマイトが謝ることでは…それより…あの、ワン・フォー・オールの話って…」
「緑谷少年。君、ヒーロー殺しに血を舐められたと聞いたよ」
「！？」
いの一番にオールマイトが話題に上げたのは、ヒーロー殺しの事だった。
咄嗟のことに驚きつつも、緑谷くんはしっかりと答える。
「あ、はい。血を取り入れて体の自由を奪う“個性”で…それが何か…」
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作者名：ミサ | 作成日時：2019年8月29日 3時
