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第三百二十七訓 女は子供を持った瞬間、母になる ページ5

ビルの屋上、いや屋根の上まで追い詰められたジジイは、歩み寄ってくるお房さんに向かって吠えていた。


橋田「くっ……来るな!!勘七郎は私の孫だ!この橋田屋も私のものだ!誰にも渡さん!誰にも渡さんぞ!」

お房「橋田屋なんて好きにして下さい。でも、その子は私の子です」

橋田「クソ、忌々しい女め。私から息子を奪い、あまつさえ勘七郎も橋田屋までも奪う気か」

お房「子供を抱きながらそんな事を言うのはやめて下さい」

橋田「バカな。こんな赤ん坊に何がわかる?」

お房「覚えているんですよ。どんな乳飲み子でも。特に優しく抱かれている時の記憶は…勘太郎様がよく仰っていました。

そこには花がたくさん供えてある祭壇があって、綺麗な女の人の写真があって…」




『……大丈夫さ。お前がいなくともやっていけるさ、私達は。飯も私が作るし、オシメも…まァ、勝手はわからんが、何とか取り替える。だから、安心して逝くといい。勘太郎と橋田屋は、私が護るよ』





お房「……それで貴方はこんな事をやってるんですか。こんな事をして、勘太郎様や奥様が喜ぶとでも?」


ジジイは目を逸らし、押し黙る。それから、口を開いた。


橋田「……勘太郎は生まれた時から病弱だった。長生きしても人の三分の一がいいところだと医者に言われてな。

だがそれを聞いて妻は、人の三分の一しか生きられないなら、人の三倍笑って生きていけるようにしてあげればいいと…蝉のように短くても、腹一杯鳴いて生きていけばいいと…そんな事を言っていた。

だが、私は妻ほど利口じゃなくてな。医者を腐る程雇って、まるで檻にでも入れるかのように息子を育てた。

…どんな形でもいい。生きていてほしかった。勘太郎にも妻にも…」


ジジイはそう言うと、屋根に腰を下ろした。


橋田「…結局みんな無くしてしまったがね。私は結局、約束を一つも…」


そんな彼の頬に、勘七郎がそっと手を触れた。それを見て、お房さんもしゃがむ。


お房「全部無くしてなんかないじゃないですか。勘七郎は私の子供です。でも紛れもなく…貴方の孫でもあるんですよ。

だから、今度ウチに来る時は、橋田屋の主人としてではなく、ただの孫想いのおじいちゃんとして来て下さいね。茶菓子くらい出しますから」


ジーさんは蹲り、嗚咽を堪えて泣き出した。

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ミリア - すごく気に入った作品で面白かったですもし他の作品を作る予定なら銀魂の作品でアニメKかリボーンの世界にトリップか転生した銀時か高杉の姉か妹の作品が読んでみたいです説明が下手ならすみませんこれからも体にきよつけてがんばてください。応援してます。 (2017年8月9日 18時) (レス) id: e3c7f73b1f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミサ | 作成日時:2017年7月7日 0時

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