『万人斬り』の刑務官【ナンバカ】season:10

132-5 新人さんいらっしゃい ページ48

「いえ、彼は十舎の囚人でして」
「知ってる奴なのか？」
「はい。私の数少ない知人の一人だった方です」
「『だった』？」
「翁様から聞いた話ですと、どうやら事故で記憶がなくなってしまったみたいなんです」


Vさんの知人？Vさんって確か、昔預けられた施設でアホみたく酷い扱いを受けてたんだっけ。それこそ飼い殺しにされて…。そんな人の知人、ってことは間違いなくその施設にかかわりがあるよな。かなり昔のデータだし、集められるかどうかわからないけど、まぁアイツ(・・・)なら大丈夫だろ。
そうと決まればサクッと連絡を入れて…。


「30番様、入りますよ」


白いカーテンを開けるVさんの背中越しに、視線を投げる。ベッドの上に腰掛ける、ライダース姿の大柄な男を確認した。
コイツが30番…Vさんの昔の知り合いか。ロックに負けず劣らず、ガラの悪さが目立つ奴だな〜。Vさんの問いかけにも無愛想に返すし。
でも特徴的な雰囲気だな。顔も割れたし、早速奴(・)に連絡をとって…。


「志乃ちゃーん！」
「お”ふっ」


突如背後からニコの突進を受けた。ずしっとのしかかる重みに首が、首が持っていかれる…！


「ニコ…てめぇ…」
「ねー、早く戻ろうよー。そろそろアニメが始まっちゃう！」
「はいはいわかったよ…まったく」


あーもう、これ以上ニコをほったらかしてたらダメだ。アニメ見たさにもうめちゃくちゃに暴れるよ多分。

情報収集の件…アイツに連絡しようと思ったけど、どうしよう。やっぱやめようかな。
一番の理由として、そいつがシロガネ(わたし)とのパイプを唯一持ってっから。
要は、殺し屋時代のツテ。全てから綺麗さっぱり消えたい私としては、あまり過去の奴らにもっかい会うとかあまりしたくない。連絡とるのもね。
ま、そいつに関しては情報収集能力と口の固さから、出所後もちょこちょこ連絡とってたんだけど。

私の締めくくりは、もう少しで完成する。でも、それと同時に別の陰謀が動いてる感じがする。
何が始まるかはまだ読めないし、個人的な興味の範疇を出ないから、あまり下手に外部と通信しない方がいいかもな、って。ただそれだけ。

あー、めんどくさ。何事も慎重に動かなきゃね。私の一挙手一投足が、今後の身の動きに全て関わってくる。

大丈夫。大丈夫。私はまだ、間違えてない。

溜息を一つ吐いて、ロックの背中に声をかけてから、私達は医務室を後にした。

あ、新規メンツ邂逅回はまだ続くぜ。
それではまた次回！

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