131-5 蛇さんこちら ページ42
ふらりと倒れかけた私の背後には、八摩多主任が立っていた。意識の混濁により私はその状況を理解できなくて、受け止められたと気づくのにも若干時間がかかった。
「!!!よよよよ、吉田さ…!!」
「ん…」
顔を真っ赤にして、テンパりながらも八摩多主任は私を支え続ける。
「あ…すみません、八摩多主に……」
自らの足で立ち上がった瞬間、パチリと赤い目と見つめ合う。真っ白な細長い体で、首をもたげる蛇だ。刹那、周囲の空気が一気に凍り付いた。
「マズイ!志乃ちゃんって蛇が苦手じゃ…」
視線を重ねる私と蛇。すぐに悲鳴が轟くと思ったのだろう。ジューゴ達と主任は素早く耳を塞いだ。
しかし、私の脳は至極冷静だった。
目の前にいるのは、私の大嫌いな蛇。うん、そうなんだけど。でも、なんだか…あれ…?全然怖くない…?
「?あ、あれ…?」
「おーい、志乃ちゃーん…?」
私の異変に気付いたみんなが、こちらの様子を伺う。間近で慄きながら、八摩多主任も声をかけた。
「よ…吉田さん…?」
「…………なんか…さっきの絵の方が、蛇より何倍も怖くって…。あれ?蛇…うん、蛇……」
そーっと、指を蛇に近付ける。次の瞬間、ずいっと蛇の方から私に寄り添ってきた。
わ、蛇ってこんなに冷たいんだ…。なんか、すっごく気持ちいい…。
「…めっちゃ可愛い」
「「「「ええっ!?」」」」
うん、「え、何言ってんの!?」みたいなみんなの気持ちもわかる。でも「明日は槍でも降るのか?」って顔してる主任はちょっと後でお話があります。
いや、多分なんだけど、ジューゴの描いた空想上の生物があまりにも恐ろしすぎて、八摩多主任の蛇が全然怖くなくなったんだと思う。
ていうか確実にそう。
この私にトラウマ植え付けるとかお前すごいなジューゴ。でもそれに関しては絶対に許さないからしばらくアンタのこと無視し続けるね。
だってなんか…悔しいじゃん。あのジューゴが私に新たな苦手なものを作らせるなんて。ムカつくから絶対言ってやんないけど。
と、いうことで目的を果たした八摩多主任は帰ることに。私はその後ジューゴと口をきかず、3日後ウノに付き添われる形で仲直りしました。
怒った理由は絶対に言わなかったよ。だって弱味握られたとかマジで嫌だしムカつくからね!!
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葵 - こんばんは🎵 続きがとても楽しみです❗ (2021年11月18日 21時) (レス) id: 971912fc9c (このIDを非表示/違反報告)
シオン - 違っていたら申し訳ありませんが吉田志乃の父は銀魂に出てくる吉田松陽ですよね?それに弟子の虚も出ていますよね?銀魂ファンなんですか?実は私も銀魂ファンなんです。私の押しは、沖田君です。特に沖神が好きです。 (2021年5月16日 21時) (レス) id: 5d193de02d (このIDを非表示/違反報告)
シオン - すみませんがお願いがあります。[幕間] 夜明けになる前に [其の九] の場面での吉田天乃の絵が見たいです。お願いできませんか? (2021年5月8日 14時) (レス) id: 5d193de02d (このIDを非表示/違反報告)
シオン - ところで、リクエストいいですか?私は、ハニーやトロワとの話が見たいです。 (2021年5月1日 4時) (レス) id: 5d193de02d (このIDを非表示/違反報告)
シオン - こんにちは、とても素晴らしい作品だと思います。続きを楽しみにしています。頑張ってください! (2021年5月1日 4時) (レス) id: 5d193de02d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサ | 作成日時:2021年3月9日 23時