『万人斬り』の刑務官【ナンバカ】season:10

127-2 目指せレベルアップ ページ27

あれ、なんだか嫌な予感がするぞ。よーし！ビンタの手、よーい！発射！


バチィン！！

「いてぇ！」
「やっぱお前かジューゴ。毎度のように脱獄しやがって…」


そこには、ぶっ叩かれた頬を押さえて、涙目で私を見上げるジューゴがいた。

さっさと牢に戻そうとジューゴの手を掴むと、その手を逆に取られた。


「なぁ志乃、俺運動しようと思うんだけど」
「は？」


唐突な発言に、面食らった私はポカンとする。

運動？ジューゴが？運動を？？


「…アンタ大丈夫？頭でも打った？」
「今志乃が普段俺のことどう思ってるのかわかったわ」
「別に今じゃなくてもいつも態度に示してるだろ？」


当たり前の事を言ってやったら、九に顔を埋めて泣き出した。相変わらずめんどくさいなコイツ。

つーかいきなりどうしたのよ。何があってそういう話になったわけ？
事情を聞くと、なんでも新年舞闘会で勝ち抜くために、ジューゴの体力向上(きょうか)が必要になったらしい。なるほど、普段無気力なジューゴが、13房のために頑張ろうとしてるわけか。まぁ、そういう事なら…背中を押してやるのが刑務官(わたしたち)の仕事かな。


「んー…なら、あそこ(・・・)に行く？」
「あそこ？」
「とことん不真面目な奴ばーっかが送られる、地獄の訓練場」
「じ…ごくの、くんれんじょお…？」


爽やかな笑顔で言うと、ジューゴは固唾を飲んだ。ふふふ、その怯えた表情サイコーです。ありがとうございまーす。
ジューゴを脅して楽しむ私に、主任が呆れながら紙を一枚差し出した。


「ちょうどよかった。オイ志乃、今からそいつをそこに連れて行け。ついでにお前も一緒に訓練してこい。夕方まで帰ってくんな」
「あっ、はい」
「ちょっと待て夕方って丸一日そこで運動するってのかよ！」
「志乃(コイツ)つけてやっただけありがたく思え。これ訓練場までの地図な」


主任は私に地図を押し付けると、すぐに背を向けた。

あ、察した。これは、「これでようやくタバコが吸える」と思ってる背中だ。私わかっちゃった。
ここで主任に絡むとタバコ吸えないイライラがこっちに向けられるから放置しておく。

OK、触らぬ神に祟りなし。絡まぬゴリラに拳骨なし。コレ共通認識ね。

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