『万人斬り』の刑務官【ナンバカ】season:12 (ページ26)

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155-1 クーデター開始ページ26

『何だ何だぁーーーー！？突如志乃ちゃんの周りに巨大な突風が発生ぃいいい！！ボールごと巻き込んで尚、激しく吹き荒れているぅぅぅぅぅぅぅぅ！！』

三鶴のアナウンスが状況を説明した通り、アキのボールが志乃にぶつかる瞬間、強風が彼女を包み込んだ。ボールは避ける間もなく竜巻に飲み込まれ、志乃と共に姿を隠してしまう。

上から見ていたウノは、固唾を飲んで様子を伺っていた。風のせいで、中にいる志乃がどうなっているかわからない。
彼女の無事が確認出来ない中、風を起こした張本人に猿門が叫ぶ。

「五浄！お前何してんだよ」
「別に、あの小娘に言われたことをやってるだけだよ！気に食わないけどねぇ！」

志乃を隠した突風は、五浄の芭蕉千によるものだった。五浄は更に風の威力を強めるべく、もう一度扇子を振るう。
その脳裏で、志乃に言われたことを思い出していた。

ーーアキがボールを私に撃ち込んだら、当たる直前を狙って私をお前の風で包め。アキからボールの主導権を奪う。

何を言っているんだ、と思った。彼の武器の全貌を知っているわけでもないのに、何故「上手くいく」と自信を持って言えるのか。

「確かにさっき、アタイの風でボールは防げたが…それだけで済む話じゃないはずだ」
「何をする気なの…？志乃ちゃん…」

傍らで事の顛末を見届けるしかないキジが呟く。すると、風の中から黒い帽子が飛んでいった。
竜巻の中にいる、志乃のものだ。宙を舞ったそれに誰もが気を取られ、見上げた。

その瞬間だった。

「ーー纏」

見たことのある光景に、五浄は言葉を失う。五舎の地下でジューゴがやったことを、彼女はそっくりそのまま模倣したのだ。
それに気付けたのは、五浄とウノ、ジューゴのみ。

その場の全員が、飛び上がった志乃に目を奪われる。彼女の視線の先には、風に阻まれ威力を失ったボールが浮いていた。
ボール越しに、716番ーーナイルと志乃の目が合う。志乃は一度ニヤリと笑うと、風を纏った刀を渾身の力で振り抜いた。

「クーデター開始だ」