153-2 腹の底を覗き見る ページ17
しかし、この大会は囚人と看守が共に戦うルールの競技もある。
こちらの看守側には、南波最強と名高いハジメや志乃がいるのだ。少なくとも、命の危険はないだろう。
「とにかくそいつと関わらなきゃいいってことっすよね?でも、こっちにはハジメや元殺し屋で超〜強い志乃ちゃんだっているし、きっと大丈夫じゃ…」
「ダメだ。おそらくだが、シロガネとその囚人が引き合えば、どうなるかわからん」
「どういう意味っすか…?」
「シロガネは今でこそああして落ち着いてるが、一度昔のスイッチが入れば、看守から殺し屋に戻っちまう。そのトリガーを引きやすいのが、例の王だ。殺し合い、操られる……全部、アイツの嫌いな事だ。それを目の当たりにすれば、抗うためにシロガネは殺し屋時代の自分に戻って強さを得る」
強さを得る。その言葉を聞いてすぐ、ウノは納得がいかなかった。
昔を振り返らずとも、志乃は十分強いではないか。新たな力を得ようとする理由がわからない。
しかし、ここで思い返してみる。
志乃は“看守”であろうとすればするほど、動きが鈍くなっていた。
五舎の地下牢獄で、彼女はジューゴを庇おうとしたところを逆手に取られ、腕の骨折という大怪我を負った。
六舎の時もそうだ。ハニーを守るため、自らの身体を盾にしようとした。
何かを“守ろう”とする時、彼女は弱くなる。自分が看守であるという自覚が強くなればなるほど、比例して弱体化していく。
それを補うために志乃は一度、かつての何も守らず何も構わない、冷酷な戦闘マシンだった己を取り戻そうとするのだ。
「シロガネは優しいから、もしそいつと戦うってなった時はきっと誰よりも先に前に出るはずだ。自分が傷つくだけなら、いくらでも無茶を通しちまう。だからさ、ウノ」
「はい…?」
「アイツを頼んだぜ。お前相手なら、シロガネも自分の考えをちゃんと話してくれるはずだ。それをきちんと受け入れて、生かしてやってくれ。看守だろうと何だろうと……ーーアイツは、俺達の大事なシロガネだからさ」
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「そろそろ、自己紹介してくれてもいいんじゃねぇの?俺はもう、あんたの正体にも気付いてるんだぜ?」
上空から降ってくるウノの声を耳に入れつつ、目の前のミーラと対峙する。
警戒は怠らない。コイツが何かし始めた時点で、仕留める準備は常にしておく。それくらいの猜疑心を植え付けるのに十分な事やってるからな、お前らマジで。
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シオン(プロフ) - 続編おめでとうございます‼️ これからも楽しく読ませていただきます❗ (11月16日 21時) (レス) id: b41969ae61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサ | 作成日時:2023年11月16日 21時