『万人斬り』の刑務官【ナンバカ】season:12 (ページ16)

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153-1 腹の底を覗き見るページ16

ーー新年舞闘会開催前。
富士から他舎の情報を得ていたウノは、「三つ目の猫」の話を聞いた後、席を立とうとした。

「とりあえずそいつらには注意しとくわ。いい情報サンキューな、富士さん」
「ウノ。ついでだからもう一つ教えておこうと思う。まぁ、これはあくまで可能性の話なんだが。今回の大会は罪状に関係なく囚人が選ばれるというなら、最悪のケースとして『三つ目の猫』以上に警戒すべきは、『ブラックプレート』を持った囚人だ」

突如富士が口にした、「ブラックプレート」という言葉。
聞き慣れないそれに、ウノは眉をひそめた。

「ブラック…プレート？何すかそれ」
「ブラックプレートを持つ囚人はここで…いや、この世で最も危険とされた囚人に付けられるプレートだ。そして二度と外に出ることはないと判断された囚人…つまり、死刑囚だ」

死刑囚。そんな恐ろしい呼び名が飛び出してくるとは思っていなかった。
ウノの表情が、一気に青ざめる。

「ま、まさか、今回の大会に死刑囚が出るかもしれねぇって事っすか！？」
「あくまで可能性だけどな。そこでお前に教えておきたいのが、十二舎のとある囚人だ」
「そいつが例のブラックプレートの囚人なんすか？」
「ああ。知ってる奴はごく僅かしかいねぇ。その囚人は古くからある王族の末裔らしいんだが、その王族そのものが異常だったらしくてな」
「異常？」
「どうやら娯楽の一つとして、自分の従者に殺し合いをさせて楽しんでたそうだ」
「こ、殺し合いって！？従者だからってそんなの素直に従うもんなんすか？」
「何故だか、その時の王には誰も逆らえなかったそうだ。まるで何かに操られてるかのように、殺し合いを強制される。周りはそれを妖術や呪いだと恐れてたらしい」

まるでお伽話のような信じ難い話に、ウノは驚きを隠せない。
しかし、対して語る富士の口調は落ち着いていて、現実の重みを伝えてくる。

「の、呪いなんてそんなまさか。富士さん俺がオカルト苦手なの知っててそんなジョーダン…」
「ここでも同じ事が起きたと言ったら信じるか？あったんだよ、過去に十二舎で。例の王が囚人同士で殺し合いをさせて、少なくとも20人以上が死んだそうだ」

そう。今自分達がいるのは、世界最大の刑務所。ここには、一生外に出してはならない、凶悪犯も収監されている。
その事実を、改めて思い知らされた。