【ヒロアカ】おひさまになるために (ページ36)

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大切なものページ36

ヒーローに保護されてから、ボクは消太さんと一緒に暮らし始めた。

『今日からここがお前の家だ。よろしくね』

最初の頃は大変だった。消太さんの家にはほとんど何も無くて、食事は三食全てゼリー飲料。

このままじゃダメだと思ったボクは、消太さんに黙って家事炊事全てを担当するようになった。
消太さんは「また非合理的な事を…」とブツクサ言ってたけど、特に嫌がる素振りは見せず、ボクの料理を食べてくれた。

消太さんは雄英の先生で、雄英っていうのがヒーローを目指す人にとって誰もが憧れる高校らしい。
そこに行きたいと言えば消太さんは、

『そうか。頑張れ』

と言って頭を撫でてくれた。それが、ボクにはとっても嬉しくて。
その日から、消太さんはボクにとって、優しいお兄ちゃんでありお父さんであり…“おひさま”になった。

だから、今目の前の光景に震えが止まらない。

黒い怪物みたいなのが、消太さんに馬乗りになってる。
消太さんは両腕を折られて、さらには頭を掴まれて強く地面に叩きつけられて。

嫌だ。そんな。誰か嘘と言って。まだあの人を失いたくない。
嫌だ…消太さんが死んじゃうなんて嫌だ、いなくなるなんて嫌だ！！

「やめろ！！！」

知らぬ間に、体は駆けていた。

両手を胸の前で合わせて、“産み出す”。
両手を広げてそれを前に飛ばすと、光が収束して生き物が飛び出した。

「スワップビクセン！」

現れたのは、茶色い毛並みの狐らしき生物。
その子の後ろで地面を軽く壊して、破片を手に入れる。それを宙に投げて、叫んだ。

「ビィちゃん！！」
「ビィッ！」

肉球同士をパンッと叩き合わせた瞬間、怪物に組み敷かれていた消太さんがボクの目の前に現れる。
落ちてきた彼を抱きとめて、そっと地面に寝かせた。

「消太さん！消太さん！しっかりして下さい！」

肩を揺さぶっても、何の反応も示さない。気を失ってる？それともまさか…！？

ボクの脳裏に色濃く死の予感が過る。
早く、早く手当てをしないと！

もう一度力を振り絞って、新たな“子”を産み出す。
今度は蝶のようなその子が、消太さんの上をヒラヒラと舞い、癒しの鱗粉を落としていた。

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「誕生(バース)」“個性”紹介コーナー①

No.1:スワップビクセン
“個性”「交換(トレード)」
自分やAが3時間以内に触れた物や人の位置を交換するできる！距離や対象の重さは一切関係ない！ただし交換するには対象二つに必ず触れなければいけないぞ！