いつもと違う雰囲気【緑谷side】 ページ27
「えっ…於野！？何であんな所に」
舞台に立つことが許されるのは、恩恵を受ける人と宮司だけのはずだ。
でも廊下を堂々と歩く於野さんはいつものふんわりしたオーラは全然無くて、凛としていた。
服もそうだ。巫女装束の上に真っ白な羽織、ベールのようなものを頭に被っていて、とても綺麗だった。
…アレ？この姿…
そういえば…僕が子供の頃お母さんに頼んで連れてってもらった時、神楽を舞ってたのって…
「何でも何も、於野は神代神社の巫女だ。この神社の一切を取り仕切ってる正当な一族の末裔でな、今はアイツが宮司の座についてる。ま、というのもアイツには家族がいないからな。必然的にそうなった」
「え」
「…………？」
「ああ…緑谷と爆豪は昨日先に帰ってたから、知らなくて当然だよな」
切島くんの後を受けて、八百万さんが続ける。
「於野さん…幼い頃
「！？」
「な…っ」
「恐らくその時…於野さんのご両親は、
そんな…於野さんに、そんな過去があったなんて…
そうか…神代神楽が10年間行われなかったのは、
チラリと於野さんを一瞥する。
一人しゃんとして立っている於野さんの姿がなんだか痛々しくて、すぐに消えてしまいそうな儚ささえ感じられた。
彼女は、あの空っぽな目に何を映しているのだろう。いつもと180度違う様子に戸惑いを隠せない。それに加えて、彼女の過去を知ってしまえば…
「おっ、始まるぞ！」
上鳴くんの声にハッと顔を上げるとーー
((((((オールマイト……紋付袴似合わないーーー！！))))))
マッスルフォームの姿で、黒い紋付袴を纏い登場したオールマイト。
これほどのミスマッチは生まれて初めて見た。
僕達の意識がオールマイトに釘付けになっていると、それは突然始まった。
しゃらん……しゃらん。
大地を震わせるような鈴の音が、僕の中にズンと重みを与えてきた。
片手に鈴を、片手に扇子を持って、ゆっくりと重々しく、素早く軽やかに動いていく。
その舞は、美しいの一言に尽きた。
それ以外、僕のちっぽけな語彙力じゃ表せない。それくらいに神々しくて、言葉を失った。
それだけじゃない。この舞に、僕は既視感を覚えた。
確かに僕は幼い頃、テレビで神代神楽を見た。
けど…その時踊っていた子は…
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作者名：ミサ | 作成日時：2018年9月1日 12時
