不穏 ページ25
大勢の人が一斉に出口へ押し寄せる中、人の波に呑まれかけたところを轟くんが助けてくれた。
壁の所まで避難して、状況を把握する。
「い、一体何がどうなって…」
「わからねぇ。只事じゃなさそうだが」
ボクと轟くんは身長差があって、ここまで近付くと轟くんの胸しか見えない。轟くんは体を壁の方に寄せて、覆うようにボクを庇ってくれてる。
何が起こってるのかわからなくて、怖くてぎゅっと自分の手を握った。
やだよ…怖いよ…！
「於野」
不意に轟くんの声がして、次いで頭をポンポンと撫でられる。
「大丈夫だ」
「…！」
…ああもう、なんて不甲斐ないんだろう、ボクは。
でも…温かい…
ぎゅうっ。
「うん…うんっ！」
轟くんの胸にしがみついて、この騒動がとにかく収まるのを願う。こんな情けないボクに、轟くんは優しく慰め続けてくれた。
その時、出口の方から声が聞こえる。
「皆さん…大丈ー夫！！」
「！あれは…」
「飯田くん！？」
「ただのマスコミです！何もパニックになることはありません、大丈ー夫！！ここは雄英！！最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう！！」
え…この騒ぎを起こしてたの、マスコミなの？襲撃とかじゃなくて？
「……はー…」
「！おい」
体から力が抜けてったのを感じて、床にへたり込んだ。
轟くんがすぐにしゃがんで、目線を合わせてくる。
「あはは…ごめん。安心しちゃって…」
「そうか。立てるか？」
「うん…ありがと」
差し伸べられた手を取って、支えられながら立ち上がる。冷静になった頭で、ようやく考えた。
でも、おかしい。どうしてマスコミが、雄英の強固なセキュリティを突破できたのかな？
不法侵入と同じようなものだよ…なのにどうして…
不安と疑問が募る中、お昼の騒動はこれで幕を引いた。
＊＊＊＊＊＊＊＊
それから午後。他の学級委員決めを始める前に…緑谷くんが、飯田くんを委員長に推挙した。
こうしてウチのクラスの学級委員長は、飯田くんになった。
そして、この日の夜ーーオールマイトと約束した、神代神楽を舞うために神社へ帰る。
勿論オールマイトと消太さんも一緒だ。そもそもボクは
それはわかる。でも…
「何で
「神代神楽は月に一度、ひっそりと行われる神代神社の行事だからね！せっかくの機会だからみんなに見てもらおうと」
「もう！！」
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作者名：ミサ | 作成日時：2018年9月1日 12時
