01：首領と相談役 ページ1
○Aはこれまで長く感じていた時間が意外とあっさりと過ぎゆくことに、内心驚いていた。あの家に居た時はあんなにも一日が長く感じて、その度に絶望ばかりの現実に嘆いていたのに。かつて、これ程までに充実した日々を送ったことがあっただろうか。
晴れてこの屋敷の使用人として雇われたAには覚えることが山積みだった。まず宛てがわれたのは雑務係で、主に掃除や洗濯の仕事だった。
孤児院に居た時に一応教育として掃除等はしたことがあったので無知ではないが、何せ場所が違えばやり方も違う、習わなかった細かい部分まで覚えなければならない。加えてその量と範囲は膨大で、彼女の頭の中はもう詰め込んだ情報量でパンク寸前にまで陥った。
人間、普段やらないことに頭を回そうとしても出来ないものなのだな、とAは改めて痛感した。
だが痛感したのはそれだけではなかった。
少し歩いたり少し動くだけで、すぐ息が上がってしまうことに気付いてしまったのだ。
やはりあの家から一歩も出ず、部屋に籠り切っていたから体力が衰えるのは当然で。子供の頃より大分弱くなってしまった自分の体に、Aは悔しさと歯痒さで眉間に皺を寄せた。
このままでは役立たずとして捨てられてしまう。それだけは何としても避けたい。
そう自分を奮い立たせた彼女は体に鞭打ちしながら仕事に励んだ。おかげで二日目の朝には見事に全身筋肉痛になり、痛みを堪えながら仕事をする羽目になってしまった。
あれから一週間ぐらい、同じ事の繰り返しではあるが、着実にこなせる量も増えていき、一つの仕事に掛ける時間も短くなった。教育係のアシスタントの賜物でもあるが、仕事に真摯に向き合った彼女の努力の結果でもあるだろう。その頃にはもう、筋肉痛が起こることはなかった。
そんな今日も、Aは与えられた床掃除を黙々とこなしていた。水に浸し、十分に絞ったモップで床を擦っていく。靴跡や土などが残らないよう丁寧に、隅々まで水を行き渡らせる。
「Aさん、お疲れ様です」
教育係の先輩から教わった動きを真似していると、後ろから聞こえてきた柔らかな声にその手を止める。振り向くとそこには乳白色の宝石を収めた目を細めながら、優しい微笑みを携えている男がいた。その片腕には二、三冊程の本が抱えられていて、おそらく彼がこれから向かう先は彼の管轄である書庫なのだろうと容易に予測出来る。
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抹茶ちよこ(プロフ) - 。さん» 。さん、こちらの作品を読んで下さり誠にありがとうございます！続編はあります。リンクが連携されていない理由と検索方法はコメント欄にあります(このすぐ下です)お手数をお掛けして申し訳ございませんが宜しくお願い致します。 (3月29日 20時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
。 - 作品が好きで見させてもらっています。作品一覧に3が無いのですが、削除されてしまっていますか？ (3月29日 4時) (レス) id: fadf2e6ab2 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ちよこ(プロフ) - から入って探して頂ければと思います。申し訳ございません。ですがR18作品なので勿論18才未満の方の閲覧はご遠慮しております。もしそうでなければ、どうぞ続きをお楽しみ下さい！ (12月2日 18時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ちよこ(プロフ) - 青さん» 青さん、ご感想ありがとうございます✨こちらの続編ですがR18作品になっておりまして、占ツクの仕様上、健全物とR18はリンクを紐付けることが出来ないようになってまして…。なので続編はお手数ですが私の名前をクリックか、↑の「この作者の作品を全表示」と言う所 (12月2日 18時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
青 - とても好きです。2の続編が見つけられず…どこから観れるか教えていただけませんか？ (12月2日 15時) (レス) id: 437b233046 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2021年9月16日 15時
