お気に入りの場所 ページ41
○おそらく一生を懸けても埋まらない気がする。
「うーん……脚立はあるけど此処まで持ってくるの面倒だし」
──さて、暗い話は此処までにしよう。そうだなあ、とりあえず気分転換で此処の場所をもう少し詳しく話すか。
私が初めて此処に来た時、そりゃあもう衝撃を受けた。学園の図書室だからそんな大した規模ではないと思っていた自分が浅はかだったと思うほどに。
以前にも言ったように、この学園の教育はこの国の最高水準。なのでこの先も更に勉学に励む生徒達の為に様々な種類の専門書が用意されている。図書室の奥には一般人の私では分からない専門用語や知らない言語で書かれた本がごろごろある。
それだけでなく、此処には庭が隣接している。其処にはテラスが置いてあり、天気が良ければ解放して外で読書も出来るのだ。その景観はさながらお洒落なカフェのよう。これで紅茶とか飲み物があれば完璧なのになあ。
此処にあるものは私が知っている学校の図書室の常識を軽く超えてしまっていた。もう流石としか言えない。
そんな素敵な空間が広がる図書室を私が気に入らない訳もなく。今や此処は学園内で数少ない私が心休まる場所の一つとなった。当たり前だけど基本静かだし、利用している生徒達は皆本に夢中だ。誰も私に気付かない、私を気にしない。
そして奥の窓際が私の特等席。窓側に向かって座る席だから顔を隠せて皆の視線を気にしなくても良いから結構気に入ってる。
主に訪れる時間帯は放課後。此処で本を読むのは勿論、その日にやった授業の復習や予習、宿題をやることもある。家でやればいいって思うかもしれないけど、気分転換も兼ねてたまにそういうことをしているのだ。
そんな今日も、新しい本を探していて。冒頭に戻ると言う訳なのだが。
──よし、とりあえず届くかやってみるか。
悩んだ末に決心した私は早速それに向かって手を伸ばす。次いで踵を浮かせてみる。
「ぐっ……」
しかし残念なことにあと数ミリ足りなかった。くそ、あとちょっとなのに！ けどもう少し頑張れば届きそうだ。
全身を限界まで伸ばして精一杯の背伸びをする。ぷるぷると足が震え始める。届け、届け！ 指先に強い思いを込めて、帯に触れそうになったその時。
「これですか？」
柔らかな声が聞こえると同時に、視界の横から現れた手が私の目当てのそれに軽々と触れ、整列した本の間から引き抜いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 154人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
