見知らぬ少女 ページ3
○そんな訳。ただ理由が分からなかったから訊いただけなのに。困っているのは私の方だって。
「あっ……わ、私、
何とも言えない微妙な空気が流れ始めたその時、思い出したかのように突然声を上げる彼女。そして私に背を向けると慌てた様子で部屋から出ていってしまった。
センセイ、とは。もしかして医者のことだろうか。彼女は何故か私のことを心配した目で見ていたのだから、もしや私の存ぜぬ所で私の身に何かがあったのかもしれない。そんな記憶はどこにも無いんだけど。寧ろ今はそんなことよりも。
何だろう、この違和感。何かが噛み合っていないこの不愉快な感覚。もやもやして気持ち悪い。まるで私の記憶に、別のものが混ざり合っているような。
一体何が起こっているんだ。未だその答えは見つからず、更に混乱を招くばかり。私は、はあ、と深い溜め息を吐いて両手で顔を覆った。その時、スル、と私の肩を滑って何かが落ちた。指の隙間から見てみると、それは赤色の毛のようだった。
何だこれは。私はそれにそっと触れ感触を確かめる。髪の毛、みたいだ。そしてちょっと引っ張ってみる。──痛い。どうやらこれは私の頭と繋がっているらしい。
まさか。いやいや、おかしい。だって私は純日本人だ。黒髪の黒目、何処にでもいる平凡極まりない容姿だ。そして髪の長さは手入れしやすいようにショートにしている。こんな。こんな胸の位置よりも下にある長さなんかじゃない。
どうなっているの。もう訳が分からない。
私は衝動に駆られ急いでベッドから降りる。そして見たこともない大きな鏡台の方へと駆け寄って、鏡に自分の姿を映した。その瞬間、ひゅっ、と息を呑み込んだ。
「……これ、私……？」
そこに映っていたのはもはや日本人の面影など微塵も感じられない──赤毛碧眼の少女だった。
その後、私の頭の中には『私のものと思しき記憶』が流れ込んできた。私の顔を見下ろす若き男女は両親で、幼い私の遊び相手になってくれた少年少女は兄と姉で、私に沢山のプレゼントをくれた少々年老いた男女は祖父母で。
そして此処は私が生まれ育った家で、この華美に包まれた部屋は紛うことなき私の部屋。そしてあのベスタは私の侍女だ。私が幼い頃からずっと傍にいる存在である。──と言うことは分かったのだが。
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抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
