ショックを受ける ページ11
「ああ、メンドくさ……」
もう早速家に帰りたくなってきた、と心の中で弱音を零す。
さて。気を取り直して教室へ行くか。私は姿勢を正してから再び歩みを進める。
既に登校している生徒達の姿があちこちに見受けられる廊下を進んでいくと、不意に目の前で何かがひらりと落ちるのが視界に入った。目を凝らして見れば、それはどうやらハンカチのようで。明らかに今落ちた物だよね。私の前には一人の女子生徒が歩いている。と言うことは、それはあの子の物の可能性が高い。
私は一瞬考えたが、急いでそれを拾い上げ「あの……！」と彼女の背に声を掛けた。
「これ、落としましたよ」
振り返った少女にハンカチを差し出す。すると彼女は私の手元のそれに気付いて、あっ、と声を上げた。その反応からしてやはり彼女の物だったようだ。良かった。
「あ、ありがとうございま──」
しかし次の瞬間、顔を上げた彼女の表情が固まり、そしてみるみる内に青褪めていく。可愛らしいまん丸の瞳が一瞬にして光を失った。
「エ、エーラット様⁉︎ え、あ……っ。た、大変申し訳ございません！ 私が気が付かなかったばかりに、エーラット様のお手を煩わせてしまいまして……っ。ど、どうかお許しを……！」
「……いえ、大丈夫よ。どうかお気になさらず。頭を上げて頂戴。ほら、また落とさないよう気を付けて下さいね」
「は、はいっ！ ありがとうございます！」
ペコペコと何度も頭を下げる彼女はハンカチを受け取るや否や、すぐに私に背を向けてその場から逃げていった。私はそんな後ろ姿を静かに見つめる。……まあうん、そうだよね。これもまた分かっていた反応だ。今更驚くこともないだろう。
しかし、正直予想以上ではあった。彼女の恐怖に染まった顔。私と決して目を合わせてはいけないように伏せ気味で、酷く怯えた瞳が印象的だった。あの口振りからしておそらく下級生。別にそうするつもりはなかったのだけど、少し、彼女に悪いことをしてしまった気分になった。
ふと、周りの空気が変わったことに気付く。大勢の視線が体に纏わり付くこの感じ。明らかに負の感情が孕んだそれ。私が振り向くと皆一斉に顔を背け、まるで何もなかったかのように会話を始める。廊下に騒めきが戻る。けれど彼らの表情が微かに焦っている様を私は見逃さなかった。
まだ登校したばかりなのに、もう既に何度目かも分からない溜め息を胸中で吐く。ああ本当に、居心地が悪い。
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抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
