〃 ページ8
「──A」
ゾムは彼女の顎を掴み顔を上げさせると、その柔らかな唇を自らので塞いだ。突然の出来事に思わず目を見開いたAだったが、次第にその瞼を下ろし彼を受け入れていく。
彼女の愛を求めるように、己の愛を注ぎ込むように。ゾムは彼女の唇に噛み付き、吸い付く。何度も、何度も。
燃え上がった炎はいつしかどろりと煮え滾る液体に変化し、どんどん体内に蓄積していく。それに比例するかのように口付けは深くなり、遂にゾムの舌が彼女の口内に差し込まれる。「ん……っ」微かに眉間に皺を寄せるA。
絡まる舌、混ざり合う唾液。リップノイズが水音に変わる。
ああまずい。ゾムはそう直感した。
彼女の柔らかな感触、優しい匂い、甘い声。彼女から伝わってくる全てが酷く心地良くて。熱は治まるどころか、膨れ上がっていくばかりで。彼女にこの想いを伝えるには、もはや口付けだけでは足りなくなってきた。
止まらぬ欲求、零れる情愛。
彼女を支えていたゾムの片手が、するするとその体を撫でながら下りていき。Aは不意に訪れた感覚に思わずびくりと体を震わせた。
「あっ……ぞ、むさ……っ」
彼の大きな掌に尻を撫でられる。驚いてつい逃げようとしたが、彼がそれを許すはずもなく。離れた唇はすぐに、後頭部を掴むもう片方の彼の手にぐっと押され再び重なる。
ただでさえ、口付けだけで情事を思い出し頭が蕩けてきたと言うのに。これ以上は。
なおも続く愛撫にAは体の熱を昂らせるしかなくて。溺れそうな感覚に、彼の背中を強く掴んだ。
それが切っ掛けとなったのか、ようやくゾムが唇を離した。
「すまん、俺……まだお前のこと、愛し足りんかったみたいやわ。ええ……？」
彼女を見つめる緑玉。薄らと光を放つその奥で、熱が混ざり合い渦巻いていた。
彼が何を求めているのか。皆まで言わずともAは瞬時に理解した。彼女の顔は更に赤くなり、思わず視線を逸らす。
昨夜あんなにも愛し合ったのに。その証拠がこの腰に、体の至る所に残されている。その源は何処から。彼が人ではないからなのか、それとも。おこがましくも、それほど自分を好いてくれているからなのか。
Aは再び彼へと視線を戻す。頬を微かに火照らせながら切なく眉を顰める彼が視界一杯に広がる。ああそんな顔をされたら。
鼓動が高鳴って酷く煩い。しかしこの騒がしさは、決して嫌いではない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
抹茶ちよこ(プロフ) - nさん» こちらこそ最後まで読んで下さってありがとうございます✨nさんの心を動かす作品になれて、とても嬉しく思います！ (1月25日 20時) (
レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
n(プロフ) - 泣きました…本当に素晴らしい作品でした。ありがとうございました。 (1月22日 23時) (レス) @page9 id: 9f8fd53d26 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ちよこ(プロフ) - 雨宮さん» 雨宮さん、コメントありがとうございます✨おお…そんな方から楽しかったと感想を頂けるとは。大変嬉しいですね！こちらこそ、ありがとうございます！ (11月21日 22時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
雨宮 - 完結おめでとうございます、あまり知らないジャンルでしたが楽しんで読めました。ありがとうございます。突然のコメント失礼致しました。 (11月20日 21時) (レス) @page9 id: 7f56c29a31 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ちよこ(プロフ) - 詩歌さん» 詩歌さん、コメントありがとうございます✨私の作品は年齢制限ものが多いので全員とは言えないですが(苦笑 以前の作品も是非見て欲しいですね。今より文が拙いと思うので恥ずかしい気持ちはありますが(笑 大丈夫ですよ！全然気にしてませんから！ (11月9日 8時) (レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2023年11月4日 13時
