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「大丈夫だよ。部屋に居ることは慣れてるから」
「う、うーん……せやけど、折角自由になったのに、これじゃ意味ないし、あまりにも可哀想思てなあ。ホンマは色々と外回らせたかったんやけど…」
「お兄さんの気持ちだけでも嬉しいよ。でもお仕事があるなら仕方ないよ」
そう言って彼を安心させるようにAはやんわりと微笑む。ゾムはそれを見て、まだ後ろめたい気持ちは消えないが、快諾してくれた彼女の意思を受け取らないのも失礼だと思った。
少し悩んだ後、ゾムは無理矢理自分を納得させて、彼女に謝罪をしてから感謝の言葉を口にする。それを最後にこの話を終わらせる。
「それと一つ、考えて欲しいことがあんねん」
いつもの声のトーンに戻った彼が話題を変える。その言葉にAは首を傾げた。
「さっきも言ったけど、あんたはもう自由や。これから好きなこと、やりたいこと、なーんでも出来るんやで。だからこれから先どうしたいのか、ここでゆっくり考えて欲しいんや」
勿論行きたい場所があれば連れてったるからな！
歯を見せながら笑う彼をAは呆然としながら見つめる。その頭の中では一生懸命彼の言葉を咀嚼していた。
好きなこと、やりたいこと。
自由になった今、自分の好きなように生きていける。
そう言われて、ようやく自分で未来の選択肢が出来ることに気が付いた。
「どうしたい、か……」
まるで自分に言い聞かせるかのように、ぽつりと呟く。
突然そう言われても、パッと思い付くものが無い。仕方がない、今まで自分の道を自分で決めることが出来なかったのだから。
子供の頃の夢なんて既に忘れた。かと言って子供のように無知で無垢で、未来や夢に対して目を輝かせることはもう出来ない。
好きなことも正直無い。周りには娯楽なんて一切無かったし、寝て起きて、食べて、男の相手をする。その繰り返しだけだった。
自由になりたいと何度も願った。だが叶うとは微塵も思っていなかったので、その先のことなんて考えたこともなかった。
やりたいことなんてあるだろうか。
黙り込んで物思いに耽る彼女の横顔をゾムは静かに見つめていた。
「…て、言われてもパッと思いつかんよな。ええよ、ゆっくり考えてな。時間はいっぱいあんねんから」
その表情が心なしか暗くなった気がして、何かを察したゾムは元気付けるように笑った。その言葉に我に返ったAはただ、一つ頷くことしか出来なかった。
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抹茶ちよこ(プロフ) - コメントありがとうございます！嬉しいです！では是非読ませて頂きますね(^-^) (2021年10月29日 3時) (
レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
アンテール(プロフ) - こんな作品があったなんて…。驚きです。この作品、大好きです！(*^^*)良かったら私も書いてるのでいかがですか？自分の作品紹介してすいません。 (2021年10月27日 9時) (レス) @page40 id: 798525d29d (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ちよこ(プロフ) - はぁぶ。＠某戦争屋推しさん» コメントありがとうございます！まさかこちらの作品も見て下さったとは…！本当にありがとうございます(T-T)が、頑張ります…！ (2021年8月7日 4時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
はぁぶ。＠某戦争屋推し - 二章が気になる……。短編集の方から来た人です！抹茶ちよこさんの表し方？が好きです。更新を心待ちにしてます！頑張って〜 (2021年8月5日 18時) (レス) id: 457f98608e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2021年5月21日 14時
