38：彼女の決断 ページ38
「今日はホンマにありがとな、トントン」
道路脇のこじんまりとした駐車スペースに車を停め、ゾムとトントンは外へと出た。
トントンとはここでお別れだ。彼はこれからまた別の仕事で出かけなければならないのだ。
二人が乗ってきた車の前には別の車が停められていた。トントンの私物である。
「別にええよ。俺らの恩人を助けられたんやから。まあ、流石にこんな少女とは思わへんかったけど」
彼が窓越しに後部座席に視線を向けると、ゾムも釣られてそちらを見る。
そこには泣き腫らした目を閉ざして、シートに横たわる少女の姿があった。
子供のように大泣きした後、落ち着きを取り戻した彼女にゾムは今後の話をした。一旦自分達の拠点に連れていくこと、そこで彼女にこれからどうしたいのかを考えて置いて欲しいことなど。
力無く頷く少女は果たしてちゃんと聞いていたのか。その様子からは若干怪しいと思ったが、まあ無理もないだろう。
案の定、それから静かになった彼女は気付けば目を閉じて小さな寝息を立てていた。安心したのか、泣き疲れたのか。ともかく流れた涙の跡が残るその顔は痛々しいとさえ思える程だった。
「ホンマに辛かったんやろな。聞いててめっちゃ心が痛かったわ」
「せやな。早く拠点に連れてって安心させたいわ」
そう言って、穏やかな表情で少女を見つめて笑う彼に、トントンは物珍しげなものを見るような表情をする。
二人の関係については彼女が眠りについてから車内でゾムに聞いてみた。偶然的な出会いから彼女に助けてもらったこと、彼女の虐げられてきた環境など。
この裏世界では彼女のような存在は少なくない。それに対して同情心は生まれるが、あくまでそれだけだ。助けたいとか、そこまで情が入ることはないし、そもそも手が回らない。勢力を強めている自分達には敵が多い。
裏世界で生きる者同士、接点が無いわけでは無いが、色々な偶然が積み重なり、その結果が今目の前にある。たった一人の少女を過酷な環境から救い上げられた、もしかしたら一つの命を救うことが出来たのかもしれない。
彼女は仲間でもない自分達に有益な情報をくれた。あの口振りからすれば、おそらくゾムの為に情報を掴んでくれたのだと思う。それに関しては内心で少女と仲良くなった彼にナイス、と素直に賞賛を贈る。
自分達を助けてくれた恩人を特別扱いするのは当然で、彼女を救いたいと思うゾムの行動には賛同の意を示した。
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抹茶ちよこ(プロフ) - コメントありがとうございます！嬉しいです！では是非読ませて頂きますね(^-^) (2021年10月29日 3時) (
レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
アンテール(プロフ) - こんな作品があったなんて…。驚きです。この作品、大好きです！(*^^*)良かったら私も書いてるのでいかがですか？自分の作品紹介してすいません。 (2021年10月27日 9時) (レス) @page40 id: 798525d29d (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ちよこ(プロフ) - はぁぶ。＠某戦争屋推しさん» コメントありがとうございます！まさかこちらの作品も見て下さったとは…！本当にありがとうございます(T-T)が、頑張ります…！ (2021年8月7日 4時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
はぁぶ。＠某戦争屋推し - 二章が気になる……。短編集の方から来た人です！抹茶ちよこさんの表し方？が好きです。更新を心待ちにしてます！頑張って〜 (2021年8月5日 18時) (レス) id: 457f98608e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2021年5月21日 14時
