34 ページ34
○破壊された出入り口を潜ると、頭上に星空が広がる。そんな綺麗な光景とは裏腹に、後方からは未だに戦闘の銃声が引っ切り無しに鳴っている。
ゾムはそれに振り返ることもせず、戦場を抜けて安心したのか、悠々と道を歩いていく。そして遂に二人は屋敷の
すると塀の沿いに一台の車が停まっていた。闇に紛れるような漆黒のそれに特に警戒する様子もなく、ゾムは近付いていく。
「もう目開けても大丈夫やで」
車の前に立ち止まり、安心させるように優しく声を掛けると少女の瞼が恐る恐る開かれていく。そしてここはどこかと、不安そうな眼差しで周りを見渡す。
一旦降ろすで、と先に断りを入れてからゾムはゆっくりと彼女を自分の腕から解放する。勿論靴など履いていないので、少女は裸足で地面を踏み締める。
自分の足でしっかりと立った彼女を見てからゾムは暗視ゴーグルを外して、助手席の窓から車内を覗き込んだ。すると運転席には腕を組みながら目を瞑っているトントンの姿があった。
「トントーン、起きてぇな」
ゾムがコンコンと窓をノックすると、首を揺らしていた彼の目がゆっくりと開かれる。どうやら寝ていたようだ。
半開きでまだ眠そうな眼差しを自分を起こした音の方へと向けた瞬間、一気に覚醒したように見開く。そしてゾムが「開ーけて」と子供のような間延びした声を掛けると、急いで運転席のドアにあるセンタードアロックのスイッチに手をかける。
全く緊張感の欠片もない彼の様子にゾムは苦笑を浮かべた。まあ、連日の勤務で疲れているのだから仕方がないのだが。
「入って」
解錠された後部座席の扉を開け、少女に中に入るよう促す。乗るんですか、と言わんばかりの表情で彼女がゾムを見上げる。彼が肯定するようにニッと笑みを浮かべると、少女は少し遠慮気味に車の中へと入っていく。
車のボディカラーと同じ、黒の皮張りのシートに腰掛け、何気なく視線を前に向けると、眼鏡越しに目を見開いてこちらを見ている男の顔があった。
「え⁉︎ おいゾム！ まさかその情報提供者って言うんは…」
「そ、こいつ」
奥詰めてや、と少女に言い、彼女が運転席側の後ろまで進むとゾムも車の中へと乗り込む。予想外の登場人物に衝撃を隠せないトントンは「マジか…」とぽつりと呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 137人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
抹茶ちよこ(プロフ) - コメントありがとうございます！嬉しいです！では是非読ませて頂きますね(^-^) (2021年10月29日 3時) (
レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
アンテール(プロフ) - こんな作品があったなんて…。驚きです。この作品、大好きです！(*^^*)良かったら私も書いてるのでいかがですか？自分の作品紹介してすいません。 (2021年10月27日 9時) (レス) @page40 id: 798525d29d (このIDを非表示/違反報告)
抹茶ちよこ(プロフ) - はぁぶ。＠某戦争屋推しさん» コメントありがとうございます！まさかこちらの作品も見て下さったとは…！本当にありがとうございます(T-T)が、頑張ります…！ (2021年8月7日 4時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
はぁぶ。＠某戦争屋推し - 二章が気になる……。短編集の方から来た人です！抹茶ちよこさんの表し方？が好きです。更新を心待ちにしてます！頑張って〜 (2021年8月5日 18時) (レス) id: 457f98608e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2021年5月21日 14時
