検索窓
今日:2 hit、昨日:42 hit、合計:195,761 hit

▼『 ────。』(gr) ページ24




悲しくもない


苦しくもないのに



辛いと思うだけ



辛いと思うだけだから


「好きだなんて思ってないですから。」


『フッ……そうか。それは残念だな。』

いつもなら聞こえる低音も今はもう聞こえない。


目の前には、

戦場に散った血。血。血。


その中に彼の血は混ざっているのだろうか。


「……行くか…」


地に落とし踏みつけた、

『総統が死んだ』と言う連絡が入ったインカムを。


それは恐らく昨日のことだった。
もうずっと荒野を走り回っていたから日付の境目なんて分からないから確かではない。
彼がいつ死んだのかも誰が最期を見届けたのかも知る由もない。



一つわかるのは

「こんなに残しといて何先に逃げてんのよ…」

目の前には我らの国の軍の数倍と思われる敵国の兵士達がいる事。

『かの偉い人は言いました。2倍の数には勝てないと。』

幹部のひとりが言っていた言葉。

「2倍ならかわいいものね。それに……」

もう総統がいない時点でこちらの負けじゃないか。

心臓が痛い。

嘘。

本当は体中が痛い。傷だらけで白は赤に変わっていく。彼の赤色。



ー心臓が痛いから死んだフリの毎日をみなよー


もうひとりの私が幾度となく私に言い聞かせた言葉。


分かってる……分かってるけどさ…


「もういっそ死のうと思えたならこうじゃなかったのに……」

失った彼の命。これから失われていく命。奪う命。奪われるであろう自分の命。色んなものが重みとなって押しつぶされそうになるのに、聞こえるはずのない彼の声に体が立ち上がろうとしてしまう。


『さぁ、諸君戦争だ』

『立ち上がれ!!』

『軍旗を掲げよ!』


あぁ、もう嫌だ。



どうせ死ぬくせに辛いなんておかしいじゃないか


どうせ死ぬくせに辛いなんて




そう頭で考えても


辛いのは何故?



今になって彼の最期が気になった。
彼は最期「生きたい」「死にたくない」と思ったのだろうか?
私は、最期彼の頭に浮かんできただろうか?

否、くだらないか…今更。

でも結局は彼も私も人間で
人間は弱い生き物だから、生への執着を捨てられない。

仕方ないのだ。












そう仕方ない。


だから愛さえないこんな世界の色に


「グルッぺ……ン……」



もうどうかしたいと思うくせに


「あ……あぁ……」


どうもしないままで


私は目を閉じた。





『 ────。』

▼解説→←▼続き



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (64 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
289人がお気に入り
設定タグ:我々だ , wrwrd , ○○の主役は我々だ!   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

角砂糖(兼:ただの炊飯器)(プロフ) - ランさん» 書けました!宜しければ読んだってくださいm(*_ _)mリクエスト本当に嬉しかったです♪ありがとうございました (2018年3月14日 16時) (レス) id: b04e9ddf40 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(兼:ただの炊飯器)(プロフ) - ランさん» ありがとうございます!!もちろんです(*^^*)ぜひぜひ書かせていただきます (2018年3月14日 15時) (レス) id: b04e9ddf40 (このIDを非表示/違反報告)
ラン(プロフ) - リクエストよろしいでしょうか?鬱先生のハッピーエンドのお話をお願いしたいです! (2018年3月14日 15時) (レス) id: e5666d0338 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(兼:ただの炊飯器)(プロフ) - 十弧さん» 良かったぁ!!!リクエスト本当に嬉しかったです_( _´ω`)_♪ぜひぜひこれからも来たって下さいね、いっぱい書きたいです!ありがとうございました (2018年3月14日 0時) (レス) id: b04e9ddf40 (このIDを非表示/違反報告)
十弧(プロフ) - 角砂糖(兼:ただの炊飯器)さん» リクエストしにお邪魔させて頂くかも知れません…。これからも作者様のお書きになるお話を楽しみにしています。これからもご無理なさらず頑張って下さい! (2018年3月14日 0時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:角砂糖 | 作成日時:2017年12月2日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。