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『あ』
ふと気がついた。
課題であろうプリントに名前が書いてある。
ただそれだけのものに目がいった。
『2人とも名前に"己"が入ってるね』
「あっ！？ほんとだ！！」
「あー…そんなことで声あげないでくださいよ」
『爆豪くんねぇ…』
「爆豪くんそんなことって酷くない！？」
横から己遥が入ってきた。
Aの言葉を遮る。
Aと目が合い、笑いかけてきた。
けれどもそれは瞳の奥で何かを考えているような深い笑顔。
ニコニコとした人畜無害そうな笑顔を彼女は一瞬たりとも崩さない。
『すっごい運命感じる！！！』
___う、……ん、めい。か。
Aが受けた第一の感じはへーっと言うほどの無関心だった。
ふーんと思いつつ胸の奥にほんの微か、もやっとした気が_______
____いや何も？
自分にとってはどうしたこともない話だ。
首を振り、邪念を晴らす。
「共通のことがあるなんて運命感じない！？爆豪くん！？」
どうしても爆豪にイエスと言ってほしいと言わんばかりにぐいぐいといく己遥。
爆豪はそれに同意見を持ったのか、それとも違うのか、よく分からないいつもの悪戯っぽい笑みを浮かべて、
「なら俺はセンパイと運命っすね」
『え？』
「え？」
Aが先に応え、2秒ほど遅れて己遥が反応した。
「髪色似てるじゃないっすか」
『え、…ああ、確かにまぁ、そうなんだけど』
「だって共通のことがあると運命なんだろ？」
爆豪がチラッと己遥を見る。
しかしそれにAは気がつかない。
沈黙が流れると同時に着信音が鳴った。
Aのものではなかった。
そぶりからして爆豪のものでもなさそうだった。
と、なると。
「すいません、友達から連絡きたんで、失礼します」
己遥が席を立つ。
そのまま教室を出た。
『行っ……ちゃったね』
「センパイ2人きりですね」
『なっ！？……って、いつもでしょうが！』
「良い反応〜」
少し睨みAは言った。
「それに、」
「運命のヤツには多分もう会ってるんで」
『え？』
爆豪が持参したペットボトルのお茶を飲む。
「何でもねーっすよ」
そんな2人の会話を、ドア越しで聞いている者がいた。
爆豪の言葉に鋭く反応する。
「あの爆豪勝己が根暗女にちょっかいだしてる噂って本当だったんだ〜」
陽気な雰囲気でスマホをいじる。
「ま、どーせ、とっちゃうからいいか」
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作者名：おにぎり同好会委員長。
| 作成日時：2021年12月27日 17時
