□スピーチ ページ35
.
「先輩に、予餞会のスピーチをお願いしたくってぇ」
『……私が！？』
数日ぶりに図書室へやってきた己遥はAに顔の前で手を合わせてお願いをする。
一緒に、というか半端強制に己遥に連れてこられていた。
腕を組んでやって来たから多分そうだろう。
「是非、来年3年生になる先輩にして欲しいんです〜」
『え〜、いや、人前出てやるとかちょっと……』
断ろうとするAの手を己遥は取る。
「やっぱダメですよねぇ…」
涙が目のふちまで来ており、泣き出しそうな声をしてしきりに哀願する己遥。
Aが怯む。
そして、
『やっ、やってみるね……』
そうAが言うとパッと己遥は顔色を変えて、
「わー！ありがとうございます」
ニコッと人当たりのいい笑顔を浮かべ、腹に何かを隠しているような、そんな雰囲気が感じられた。
「うーん……思いつかない…」
休み時間に原稿用紙を受け取ったAが放課後、図書室で悩み込んでいた。
____なんて書いたらいいんだろう。
ベタに書く？
それともググっていい感じの真似して書くか……
「セーンパイ」
図書室の入り口で爆豪がいつも通りAを呼ぶ。
Aは呼ばれて顔を上げた。
「……大変すっね」
『まー…でも……あそこまでして頼まれたらね…』
苦笑いをしながら、半端なこたえかたをした。
「あっそ」
爆豪は邪魔したりせず、1人でに勉強を始めた。
それがAにとっては落ち着きがないことで、つい話しかけた。
『爆豪くんならどうする？なんて書く？』
「センパイ、もしかして寂しいんですか？」
爆豪が愉快さをまぶたに浮かべ、上機嫌に目を細めた。
『んなわけないでしょ！！』
「へーへー」
爆豪が怒るAを流す。
「…そーいうの俺は、俺の書きたいことを書きますし、別に無理して他の人の文章参考にして書かなくていいんじゃねぇっすか」
Aはポカンとした様子で爆豪を見た。
「センパイはセンパイだし」
そんなAの鼻を爆豪は人差し指で突き笑った。
おまけに「間抜け面」とククッと喉を鳴らし微笑んだ。
『じゃ、じゃあさ！書き方！書き方教えて！！！』
必死なA。
爆豪は関わりたくなく、わざとからかったのだが、どうも爆豪もAのお願いに弱い。
____メンドクサ
爆豪は厄介なものに関わったと顔を顰めた。
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作者名：おにぎり同好会委員長。
| 作成日時：2021年12月27日 17時
