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『ハイ、ドーゾ』
放課後、いつも通り図書室に行くと爆豪がすでにカウンター席で本を読んでいた。
Aは荷物を置いてすぐに爆豪に今朝のものを渡す。
「何スカ」
そう言う爆豪のカバンはパンパンではなかった。
モテるくせにカバンがいっぱいでないのは不思議だとAは爆豪のカバンを見つめる。
『全部、爆豪くん宛のチョコです』
嫌味ったらしくAは言い放った。
ふんっと鼻息を鳴らして、カウンター側に座り込む。
いつも爆豪とは向かい合わせになる状態だ。
「いらないんで捨てといてください」
『え…』
爆豪の言葉で全てを察した。
多分この男、貰ってないんだ。
いや、受け取ってないんだろう。
いらない。
その一言でのらりくらりしてきた様子がありありと映し出されていた。
『え、勿体無いし、可哀想…』
「直接渡してこないヤツのなんかいらねぇんすよ」
爆豪は本に目を向けたままこちらを見ようともしない。
『可哀想じゃん！勇気だして渡したのを…』
と、爆豪が本をパタンと閉じて立ち上がり、A側のカウンターまで歩いてきた。
身の危険を察知し、Aは後退りをする。
「センパイならそう言うと思って、直接渡してきたのは全部クラスのヤツに渡しました」
顔と顔がくっつくくらいの距離まで近づけられ、思わず赤面する。
爆豪もこうすればAが何も言わなくなると分かっていてしているのだ。
「問題は？」
『な……ないっから！離れて！！』
ますます近づいてくる爆豪を両手でドンっと突き放した。
そんなAの慌てぶりを見て、爆豪が愉快そうに笑う。
「で？センパイからはチョコないんですか？」
『えっ』
____バレンタインの存在自体忘れてたし……
『ない…よ』
「ホウ」
爆豪が例の笑みをする。
「センパイは？可愛い可愛い後輩にお世話になっているのにも関わらず？少しのお詫びのチョコもないんですか？」
チョコひとつ。
そうチョコひとつだが、爆豪もこう見えて必死である。
余裕そうな笑みのみをAの前でしか見せていないが。
『うっ……』
そしてこの女、後輩の眼差しに弱い。
『こっ、…ココア買ってくる！！！』
Aが財布を片手に図書室から脱出した。
Aが出て行ってから数秒後。
爆豪が勝ち誇った表情を浮かべた。
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作者名：おにぎり同好会委員長。
| 作成日時：2021年12月27日 17時
