・ ページ29
.
『すごいね、爆豪くん』
「何がスッか」
『……え、いや、社交ダンスあんなフツーに踊れて』
「あー……昔習ってたんで………つか、スタンダードはゆったりとした動きが多いから誰でも踊れるし…」
____スタンダード？
専門用語がチラッと出てきたあたり、本当に習っていたのだろうとAは確認する。
「体幹がしっかりしてないとすぐに姿勢が崩れて美しくないシルエットになるんすけど、センパイ思ったより体幹良かったんで」
『へー……』
ぼやっと応える。
よく分からない話なんだからこういう態度にはどうしてもなってしまう。
「それよりセンパイ」
くるっと振り向き、爆豪が話題を変える。
多分だが、今から話す話をしたかったのだろう。
『へっ…？』
爆豪が突然目を細めてニタリと笑った。
なんだか嫌な予感がした。
両肩を掴まれる。
____あ、これ逃げられないやつ……
「センパイが約束を破る人だなんて思いもしませんでした」
小悪魔を思わせるいつものイヤーな笑顔。
『………そっ、それはね！あの…タキシードで行ったら爆豪くん嫌だよなぁって気持ちでね！だから佐久良さんに言ってもらおうと思ったんだけど………』
「セーンパイ」
言い訳だらけのAの口を止めるように爆豪がおでこにデコピンをぶちかます。
『痛ッ！？』
「まー、なんとなく分かったんでもういいっス」
『え〜……』
だからといってデコピンはないだろ。
Aが不満そうに爆豪を見つめる。
「何スカ」
『……別に…』
「またキスして欲しかったとか？」
爆豪がこの前の出来事をAに思い出させるように自身のおでこをトントンと叩く。
『〜〜〜ッ！！！？そんなわけないでしょうが！！！』
月の下で、Aの言葉がよく響いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 583人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おにぎり同好会委員長。
| 作成日時：2021年12月27日 17時
