後輩くんはだいたいずるい【爆豪勝己】 (ページ16)

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「センパイ」

ふと呼ばれ、振り向く。

と、そこには

『爆豪くん！？』

別れたはずの後輩が。

息が少し上がっていて、走ってきたのかな。とAは思った。

白い息が出てしまうから走ってきたとバレてしまうのが爆豪にとっては不都合。

『どっ、どうしたの！？』

「……いや、センパイ慌てすぎ」

『いやそりゃ慌てるわ！！』

爆豪も予想外でポカンとするも、すぐに調子を整えた。

「センパイ」

いつものバカにする時のニュアンスでない。

Aは気がつく。

「センパイ、ダンスパーティ出るんすよね？」

『え、……あー、うん』

「センパイ」

落ち着いた声でそう言うと、爆豪は立ち止まり、右手でAの右手に触れた。

____え、ちょ、な…に…！？

最初は手の甲同士が触れただけだったが、ゆっくりと指先を絡めて。

どきどきした。

うるさく響く自分の鼓動ばかりが聞こえてくる。

「お、…れ…と、一緒に出て欲しいん……すけど」

頬を赤く染めながら、ぶっきらぼうに小さく、彼が言う。

釣られてAも顔を赤くした。

ボッと一瞬のうちに赤く染まる。

ふは、と吐息混じりに爆豪の表情が緩んだ。

『え、ちょ、なんで笑うの？』

顔も、耳も熱い。

この熱さが触れている手から爆豪くんにも伝染すればいいのに。

「センパイ、俺と踊ってくれますか？」

『なっ……なんでそんな余裕そうなのよ！！？』

こっちは羞恥で殴りたいくらいなのに。

『いやぁ…ちょっと……』

爆豪が小悪魔の眼差しを向ける。

『……うーん…』

眼差しをさらに強くした。

『あー！もう！わかった！踊る！踊るから！』

「あざーす」

爆豪にとっては全部計算内。

ずるい後輩である。

『てか明日でもよかったんじゃ…』

「早い方がいいんじゃねぇっすか？そーいうのは」

ケロッと爆豪は答える。

『あー、そうですか』

はいはい。とAは面倒臭そうに答える。

「………今のは口実だっつの」

爆豪がポツリと本音を出す。

『なんか言った？』

「何も？」

少なからず、人通りがある道で2人は話した。

多少見られたって何の問題もない。

「………ふーん」

多少の問題も………

「八神A…………やっぱ邪魔ね…」

ない…はず。

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