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『え…』
ついに声が漏れた。
周りからは怒りも多少混じったかのようなどよめきが聞こえる。
ベージュのマフラーを巻いた、いや、ネックウォーマーか？いつもながらどこか怒っている彼はAを見下すかのような痛い視線で見てくる。
訳が分からなくなって取り敢えず、
『おはよ』
と一言言ったが、
「オイ」
と完璧無視された。これが腹黒王子である。
周りからはどよめきが聞こえる。
あの腹黒王子が女子と話している。
そんな表情で見られていた。
『はっハイ！』
「アンタ昨日のこと誰にも言ってねーだろうなぁ？」
緊張しすぎて質問の意味が読み込めない。
けれど深く考えず、素直に答える。
『だ、誰にも言ってませんけ…ど』
昨日のことの何がまずかったのか。
冷静になってきた今理由ははっきりと理解した。
それは、手元に免許なしでヒーロー活動をしたということ。
その事実を知っているからこそ彼はわざわざAの元へやって来たのだろう。
「でもまぁ…」
爆豪が頭を掻き、トゲトゲそうに見えた髪がふんわりと動く。
「俺だけ弱み握られてるんじゃ、フェアじゃねぇもんなぁ？」
___え、いや、弱みて。
弱みだなんて解釈していないAは思わず心の中だがツッコんだ。
「……それに、このまま逃せば言いふらすだろアンタ」
「い…言いふらしませんよ！」
心底どうでもいいと思っている。
そんなことをわざわざいろんな人に言いふらすほど、Aだってバカじゃない。
とにかく今は早く切り上げたくて仕方がない。
多くの生徒がこちらを息を呑むのも忘れて見守っている。
何アイツ？と目で訴えかけてくるように私に注目する。
「…俺から逃げられなくしてやるよ」
『え、いや、だから何の話…』
その瞬間、生徒達からの小さな悲鳴が全開に聞こえた。
今、自分が腹黒王子に何をされているのか。
それさえ分かれば納得だ。
周りは分かっていても、突然のことすぎてAは分かっていなかった。
数秒後、意味を理解する。
なぜ、生徒達が悲鳴を上げたのか。
今、自分が何をされたのか。_____今、キスされた。キスをされた。
は……
大混乱に陥ったAは、
…はああああああああああ！？
顔を赤くさせ、心の中で叫ぶしかなかった。
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作者名：おにぎり。
| 作成日時：2021年9月5日 12時
