□気持ち ページ48
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爆豪とAが別れる少し前。
取り残された透目と百合が水中トンネルを仲良く見るわけがない。
百合がバッと駆け出そうとする。
しかし、その手首を透目が掴んだ。
「百合ちゃんが追わんでもあの2人は大丈夫や」
「いやでも……Aが…」
「……百合ちゃん、なんで今日ここ来たん？」
「え、」
百合が一瞬固まる。
何故そんなことを聞くのか。
それだけで頭がいっぱいだった。
「そんなの、アンタみたいなチャラ男がAに突っかかるから、Aが心配で…」
「本当にそれだけ？」
「……は？」
腕を掴む力は思ったよりも強く、なかなか抜け出せない。
Aの腕を掴んだ時よりも力は強かった。
「それだけじゃなかったら他になんの理由があんのよ」
「………爆豪くんに会いに来たんちゃう？」
「………え」
スルッと手首を離す。
百合は初めてそんな言葉を言われた。
会いに来た？
なんで？
何のために？
「息抜きしたいが2割、Aちゃんが心配なのが3割、爆豪くんに会えるかもっていう期待が5割やろ？」
「………そんなわけないし…私はただAが心配で…」
「なら今日そんなに落ち込んでる顔してんのはなんなん？爆豪くんが自分に構ってくれないから？」
「違う！！」
百合が大声で叫ぶ。
我に帰り、周りを見る。
周囲にはちょうど人が少なく、見られているが、そこまで恥ずかしい思いはしなかった。
「私は、Aが心配なだけ、それ以上もそれ以下もない」
「爆豪くんとAちゃん上手くいってるもんな？」
「当たり前じゃん、恋人なんだから」
「………聞いてないんか……」
一瞬、、先程の百合と同じように固まる透目だったが、すぐにポツリと呟いた。
もちろんそれは百合には届いていない。
「え？なに？」
「………なんでもない」
「とにかく！私はAが心配なだけ！」
そのまま、百合は前へ走り出した。
「………Aちゃんもずるいなぁ」
残された透目が親指の腹と人差し指の腹をくっつけて輪っかにする。
それを覗き込んで何かを考えているようだった。
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作者名：おにぎり。
| 作成日時：2021年9月5日 12時
